リレーエッセイ

ゼミ探訪「伊藤ゼミ紹介」

伊藤 彰敏 教授

少人数ゼミは本プログラムの特色であり、学生は、2年間必ずどこかのゼミに所属します。ゼミの規模は、通常では5-6人です。ゼミは毎週月曜日に行わ れ、学生の問題意識を深めるために文献を輪読したり自身の学位論文研究について報告した上で、ゼミ教員や他のメンバーと活発な議論を重ねながら、 最終的に学位論文を仕上げていきます。

2017年02月15日

06a5a941c8325433087b8b7506684446-300x170.jpg伊藤ゼミには、主にコーポレート・ファイナンス分野のテーマで学位論文を書こうとする学生たちが集まっています。ゼミでよく扱うテーマとしては、M&A、企業再構築、コーポレート・ガバナンス、資本構成、配当政策などです。ゼミの学生のバックグラウンドは様々です。銀行、証券会社、保険会社といった金融機関の方、商社、製造業、IT企業、マスコミ業界の方など、毎年、多様な業界の学生が集います。年齢、国籍もそれなりに多様性があり、本プログラムのメルティング・スポットと(私が勝手に)呼んでいます。

伊藤ゼミのモットーは、実務上の問題に計量分析を用いてタックルすることです。「計量分析を用いてタックルする」とは、着眼する問題の背景、原因、問題を引き起こすメカニズムについて一定のフレームワークを設定し、相応の大規模なデータを集め、色々な要因をコントロールしながら、企業の意思決定とパフォーマンスとの間の相関や因果関係を明らかにしていく、ということです。

伊藤ゼミのモットーについてさらにブレークダウンすると、第一に、計量分析によって見えてくる「現実」を重視するということです。例えば、「クロスボーダーM&Aは、企業を成功に導く不可欠の戦略である」という問題意識の学生がいたとしましょう。しかし実際にデータを分析すると、クロスボーダーM&Aで業績が顕著に向上する例はむしろマイノリティーです。そこで、なぜ(少なくとも短期的には)業績は向上しないのか、M&Aの狙いは何だったのか、成果の測定にどんな数値を検討したらよいか、などと問うことで次の分析に進むことができ、事象への理解が深まっていきます。

第二に、仮説構築のプロセスを重視します。通常、仮説は既存研究の知見に基づいて導出します。そうした仮説に加えて、学生の実務経験や問題意識に裏打ちされた仮説についても、そのロジックが隙のないものであれば、積極的に検証するよう促していきます。あるいはデータを分析した結果、既存研究では予想されないパターンを発見することがあります。そうしたデータ・ドリブンの仮説も大事にしていきます。

3764d5d3125f17dc1ebddd13c74de584-300x166.jpg第三に、分析を実行する上で、また結果のインプリケーションを考える上で、成功例のサンプルにフォーカスしすぎてはいけないということです。成功要因は、成功、失敗と多様性のあるサンプルからしか検出できないという点を忘れてはいけません。また卓抜した成功例は、環境への適合が進み過ぎて返って柔軟性が欠落する場合も多いのです。成功要因を抽出できたとして、経営者としてのその知識の使い方は、既存の成功要因を新しい市場・技術分野に応用するか、あるいはい既存の成功者の成功しすぎから来る柔軟性のない部分を突くか、です。

本プログラムでは毎週、月曜の夜にゼミを行いますが、伊藤セミでは、ゼミの時間にお互いに議論を戦わせるといった本来の活動だけではなく、交流のための飲み会も年に何回か実施します。学生のみなさんはお仕事で忙しい方々ですので、そんなに頻繁にというわけにはいきませんが、同期の伊藤ゼミのメンバーによる飲み会、M1(1年目の学生)、M2(2年目の学生)合同での飲み会などを実施しています。こうした会に参加すると、みなさん、とても仲が良いと感じます。こうした席で学業の苦労をわかちあうことも、学生のみなさんの繋がりを深めているようです。

ゼミのスケジュールについては、1年目は問題意識の深化と学位論文トピックの決定を目指して色々な文献を読んでいきます。目標は、1年目の終わりまでにトピックを選択し、検証する仮説を設定し、利用するデータを確定させることです。2年目は、分析方法の詳細を詰め、実際にデータを収集して分析作業を進めて行きます。11月末には正式のドラフトを提出、12月から翌年の1月にかけては文章の質を高めるために何度も書き直していただき、1月の締め切りをむかえます。

実務と計量分析のバランスを目指し、ゼミの仲間と助け合いながら成長していくダイナミズムを楽しむことができる方なら、伊藤ゼミは、どなたに対してもいつでもオープンです。

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