シンプレクス・アセット・マネジメント株式会社
運用本部ディレクター
野村 至紀 氏 氏
2016年11月30日
人工知能技術を用いた株式市場の動向を予測するヘッジファンド戦略を開発・運用。
早稲田大学大学院 理学修士 非線形非平衡統計物理学を研究
●一般社団法人 人工知能学会 正会員
「バックテストに代わるクオンツ戦略の新しい検証方法」
「価格時系列を用いた株式市場の価格変動予想」 等を研究発表
●特許
「販売施策効果分析方法およびその分析装置」 等
2016年11月30日のゲストスピーカーは、シンプレクス・アセット・マネジメント株式会社の運用本部ディレクターの野村至紀氏に登壇いただきました。
資産運用におけるFinTech業界では、GoogleのAPI無償公開や、プログラミングの情報共有サービスQiitaによってAIによる投資運用への参入障壁が低下しています。野村氏は、「今後はスマートフォンでもデータマイニング的なテクニカル分析を行う時代が来る」と主張しました。
人類が進化の過程で獲得したパターン認知は科学的な根拠がなく、自分の都合の良いように解釈してしまうバイアスが存在します。野村氏は、「テクニカル分析もこのパターン認知によって行われており、データ分析者にとって都合の良い解釈がされているのではないか」と疑問を呈しました。
世界的にデータマイニングによるテクニカル分析が流行していますが、データマイニングによるテクニカル分析における数々の問題点を野村氏は指摘しました。一点目は、テクニカル分析におけるパターン認知の存在です。二点目は、AIを利用したディープラーニング(深層学習)によるデータ分析は、AIの学習内容がブラックボックス化するため、どのような分析を行っているのかが不透明であることです。
テクニカル分析におけるパターン認知の存在やAIによる分析手法のブラックボックス化を克服するためには、「より少ない分析手法によって客観性と科学的根拠に基づく機械学習によるデータ分析を行うことがカギとなる」と野村氏は考え、そのアイディアのもとでAIによる資産運用を開発されました。
従来のビジネスでは意思決定を行う際には十分な情報収集と説明責任が必要ですが、「機械学習の世界では、多すぎる情報収集はパフォーマンスの向上には寄与せず、逆に乱雑さ(ノイズ)をシステムに加えることでパフォーマンスが向上することがある。こうした事実は従来のビジネスの常識が求める説明責任の概念に変革を求めている。」と野村氏は考えています。なぜならば「人間社会のべき論」は認知バイアスの悪影響を強く受けたものであり、科学的には正しいという根拠がないとのこと。機械学習の常識は、われわれに馴染みのある組織や常識の在り方と軋轢を生む可能性がありますが、「われわれにとって不都合な真実を受け入れなければ、他社や他国に先を越されてしまうだろう」と野村氏は強い危機感を持っており、新技術の導入によって他社や他国に先駆けることの必要性を説きます。
また、実際にフォワードテストを組み込んだAIによるTOPIX先物取引の実演をしていただき、公演後には受講生と活発な議論を行いました。
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