Fin Techゲストスピーカー

新産業革命

Scrum Ventures  創業者/ゼネラルパートナー

宮田 拓弥 氏 氏

2017年01月25日

経歴

サンフランシスコをベースに、米国のテックスタートアップへの投資を行うベンチャーキャピタルを経営。これまでに、コマース、ヘルスケア、VR、Fintech、IoT、Mobilityなど40社を超えるスタートアップに投資を実行している。またSanFranciscoでコラボレーションオフィス ZenSquareを運営している。TechCrunch、B Dash Campなど国内外のメディア、イベントでの寄稿、講演など多数。それ以前は、日本および米国でソフトウェア、モバイルなどのスタートアップを複数起業。2009年ミクシィのアライアンス担当役員に就任し、その後mixi America CEO を務める。早稲田大学大学院理工学研究科薄膜材料工学修了。

2017年1月25日のゲストスピーカーは、サンフランシスコを拠点にスタートアップ企業に対する投資を行うScrum Ventures社の創業者兼ジェネラルパートナーの宮田拓弥氏に登壇いただきました。

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米国において宮田氏は、多岐にわたる産業で現在進行形の「産業革命」に関わっておられます。宮田氏が率いるScrum Ventures社は、サンフランシスコを拠点に、FinTechをはじめ、Mobility、IoT、VR、EC、ヘルスケアなど、50社を超えるスタートアップ企業に投資を行っています。

テクノロジーによって起きている米国の産業革命

講演の冒頭では、自動車や家屋、店舗が既にテクノロジーによってデバイス化している現状が、動画を用いて紹介されました。Tesla社の自動運転車やAmazon Echo、Amazon Goなどは、それぞれ自動車、家屋、店舗がデバイス化されたものです。 AIおよびブロックチェーン、ロボット、VR/AR技術、宇宙開発、データといった様々なテクノロジーが組み合わさることで、「すべての産業がテクノロジーで再定義されるオールテックの時代がくる」と宮田氏は主張します。FinTechもこのオールテック化への流れの一部であるといいます。 宮田氏はまた、「かつてはモノを『所有』する時代だったが、いまはモノをツールとして『利用』する時代であり、これからはモノが無人で『自動化』していく時代となる」との予想を示しました。タクシーおよび自家用車の配車によって移動サービスを提供するUBER社の時価総額が大手自動車メーカーの時価総額を超えていることにも示されるように、現代社会は既に、モノを「所有」する時代から「利用」する時代へと移り変わりつつあるといいます。

変化の時代をどう乗り切るのか

宮田氏は、オールテックの時代を乗り切るために必要な3つの処方箋を、米国の事例をもとに紹介しました。

一つ目は、変わりゆく事業の本質を理解することです。米国では眼鏡を店頭で購入するのではなく、店頭では着用だけして購入はネットで行うWARBY PARKERという企業が登場しています。宮田氏は、こうした新たな取り組みを例にあげ、小売業の事業そのものが変化していることを指摘しました。「テクノロジーによってデータ化が進めば、顧客にとってより本質的な買い物が可能になるのではないか」とも述べられました。

二つ目に宮田氏があげたのが、テクノロジーカンパニーへの変革です。宮田氏は「銀行も小売りもすべてテクノロジーカンパニーになるだろう」と予想します。米国の老舗百貨店がオンライン化で売上比率を26%上昇させたことや、Walmartがテクノロジー企業を買収したこと、AmazonがEC事業から生活全般事業に領域を広げていることなどを例に挙げ、「これからはテクノロジーを経営の中核に据える会社だけが生き残れる時代となるだろう」と宮田氏は主張します。

三つ目はオープンイノベーションの実践です。イノベーションのジレンマに陥っていた任天堂は、米国のTech企業であるナイアンティックとともにPokemon Goという画期的なゲームを生み出すことに成功しました。「従来のR&Dは閉鎖的であったが、オープンイノベーションによって変化の速い時代に対応できる」と、宮田氏はオープンイノベーションの重要性を強調します。

宮田氏は「テクノロジーの発展とその新たな組み合わせにより、各産業は今後も大きな変革を遂げることになる。FinTechはこうした一連の変革の一部である」との認識を示されました。そうした認識に立っているからこそ、Scrum Ventures社は、FinTech分野のみならず、他分野にわたる企業に投資を行っているといいます。今後いかに世界が変革していくのか、深く考えさせられる講演でした。

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