Fin Techゲストスピーカー

自動運転を見据えたMobility Serviceと金融サービス

トヨタファイナンシャルサービス 戦略企画グループ シニアバイスプレジデント

冨本 祐輔 氏 氏

2017年02月01日

経歴

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。
東京海上火災保険を経て、トヨタファイナンシャルサービスに入社。経営企画、資金調達、子会社管理などの業務に従事。 現在は、経営革新本部 本部長として、フィンテックやモビリティサービスなど新規事業を中心とした戦略の企画・策定・事業開発を担当。
・トヨタファイナンシャルサービス : Senior Vice President、経営革新本部 本部長
・トヨタインシュアランスマネジメントソリューションズ USA : Managing Director
・トランザクションメディアネットワークス : 取締役

2017年2月1日のゲストスピーカーは、トヨタファイナンシャルサービス戦略企画グループ、シニアバイスプレジデントの冨本祐輔氏に登壇いただきました。

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モビリティサービスによる市場の変化

講演の冒頭、冨本氏は「Uberの登場によって、新たなプラットフォームとエコシステムが生み出された」として、事例を紹介しました。サンフランシスコではタクシー業界の売り上げが6000万ドル減少したのに対し、ライドシェア業界の売り上げは11億ドルに上り、Uberの登場によって新しいエコシステムと新市場が創造されたことがうかがえます。冨本氏は「需要側と供給側のマッチングがリアルタイムに行うことができ、コストが激減したことにより、ライドシェアは勿論のこと人や食べ物という従来型以外の分野において、モノやサービスのデリバリーが行われるようになった」と指摘します。FordやGMは、モビリティサービスと金融サービスを融合させた事業を通じ、車の新しい買い方を展開しているといいます。このように、Uberによって新たに創出されたエコシステム・ビジネスの中には、Uber driverを支援するものや、事業の対象を広くしたもの、テクノロジーと結びついたものなどがあります。

 一方、自動運転の導入によっても、新たなエコシステムが創造される可能性があります。冨本氏は「可処分時間の消費を促すかつてない乗車体験」というユーザーニーズや、「IoT連携や自動決済」などの分野において、ビジネスの裾野が大きく広がるとの展望を示しました。

モビリティサービスにおけるトヨタの取り組み

モビリティサービスの変化により、カーシェアやライドシェアという新たなサービスや、それに付随するサービスが次々と誕生しています。これらサービスの形態はBtoB、BtoC、CtoCとさまざまですが、現在最も成長しているのがCtoCの分野であり、トヨタもこの流れに乗ろうとしているといいます。将来的には、ライドシェアとカーシェアを1台の車で行うとともに、アプリを利用してサービスを提供するようなことも想定されます。これは、自動車の稼働率を引き上げることができるビジネスであると冨本氏は指摘します。

自動運転時代における保険の在り方

自動運転時代における最大の課題は、「責任の所在が多様化こと」であると冨本氏は強調します。例えば、事故発生時の責任の所在がシステムに移ることで、運転システムのソフトウェア開発者や同システムに危害を加えたハッカーに対して損害賠償を求めることになります。日本の保険会社もこうした流れに対応した損保の仕組みを作る必要に迫られています。 冨本氏は、新たな保険ビジネスの可能性を三点示しました。一点目は車両から取得できるデータをもとに、手動と自動運転を判別したり、事故原因に活用する仕組みが必要になるとのこと。これはまさにデータ分析やテレマティクス、ファイナンス技術の組み合わせであると言えます。二点目は、自動運転固有のリスクに対する新たな保険商品の開発です。自動運転において最大のリスクとなり得るのは運転システムに対するサイバーリスクであり、このような自動運転固有のリスク対応が必要となると冨本氏は予想します。三点目はメーカーの自家保証です。自動運転によって現在よりも事故が減少することが予想されるため、メーカーが自家保証を行うことで、利用者の負担をさらに減らせる可能性があります。 冨本氏は最後に、「東京に住んでいては車の必要性は感じにくいように、自分のものさしでは計れない時に単に否定してはいけない。イノベーションは、異業種・価値観の違う人との摩擦から産まれる」と述べられました。自社の事業とは関係ないと思って見過ごすのでなく、新たに創出されるエコシステムの波に乗れるよう、常にアンテナを張り巡らせることの重要性に気づかされる講演となりました

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