Fin Techゲストスピーカー

『ブロックチェーンと仮想通貨』

慶應義塾大学 SFC 研究所

上席所員

斎藤 賢爾 氏 氏

2017年04月27日

経歴

日立ソフトウェアエンジニアリング(株) (現日立ソリューションズ)、ジオワークス(株)、東京商船大学(現東京海洋大学)非常勤講師、慶應義塾大学環境情報学部非常勤講師等を経て、現在、慶應義塾大学において、環境情報学部村井研究室、およびSFC研究所インターネットと社会・ラボ、SFC研究所パブリックテクノロジーデザインコンソーシアム所属。一般社団法人アカデミーキャンプ 代表理事、一般社団法人自律分散社会フォーラム 副代表理事、(株)ブロックチェーンハブ CSO (Chief Science Officer)、ビヨンドブロックチェーン(株) 代表取締役 CEO。一般社団法人アカデミーキャンプ 代表理事兼職。(出展:慶應義塾大学SFC教員プロフィール)

2017年4月27日、第3回「FinTechと金融市場」ではゲストスピーカーをお招きし、『ブロックチェーンと仮想通貨』をテーマに講義を行いました。ゲストスピーカーは、慶應義塾大学SFC研究所上席所員の斎藤賢爾氏です。ブロックチェーンの基礎・課題・今後の展望についてお話いただきました。
 
 はじめにブロックチェーンの基礎をご説明いただきました。ブロックチェーンとは、ビットコインと呼ばれる仮想通貨システムを実現するための技術です。ブロックチェーンは「新聞」なようなものと表現され、取引の証拠を公にして第三者が確認し担保できるという点が画期的です。
ビットコインとは、「自分が持っているお金をいつでも自分の好きに送金することを誰にも止めさせない」仮想通貨システムを指します。また、それには検証可能なことと否認不可能性の担保、二重消費を防ぐ必要がありました。そこで、ビットコインを実現するために、ブロックチェーンという技術が応用されます。
ブロックチェーンの技術は、主に①ブロックチェーン、➁その他の分散レッジャーという2つに分類されます。ブロックチェーンの代表的な技術は、OAP(Open Assets Protocol)、Ethereumです。その他の分散レッジャーで代表的な技術は、Hyperledgerと呼ばれるIBMのFabric、IntelのSawtooth Lake、ソラミツのIrohaやCordaが代表的です。  
 次にブロックチェーンの3つの課題についてご説明いただきました。ブロックチェーンは①スケーラビリティ、➁ワンネスの罠、③インセンティブ不適合性が指摘されています。①スケーラビリティの課題とは、システムがスケールアウトできないことによる集積回路のコスト・スペックに対する費用対効果が年々増加することを指します。解決策には、既存の分散KVS、DHTの手法があげられます。➁ワンネスの罠とは、ブロックチェーンは大規模災害や政変などによってネットワークが分断されると正しく作動できなくなることを指します。例えば日本は、地震によってインターネットを繋ぐ海底のケーブルが切断されてしまえばブロックチェーンが動作せず、ビットコインは維持できなくなります。③インセンティブ不整合性とは、例えばEthereumが通貨としてEtherが暴落・衰退すると基盤として存続できない点をさします。Etherの設計者であるマイナーは、Etherを得るというモチベーションに支えられますが、価値が損なってしまうとマイナーたちが撤退してしまい、社会基盤として存続できません。アプリケーション基盤と通貨システムは切り離す必要性が指摘されています。
 最後に今後の展望についてご説明いただきました。ブロックチェーンの技術は今後も発展し、多様なデジタル通貨が使われる世界になることが予想されています。既にデジタルJPYと呼ばれる国民通貨のデジタル化が行われています。MUFGコインやみずほマネーなど、今後は地域通貨や目的別通貨も発展し、貨幣経済の衰退が予想されます。