2018年03月05日

修了生向けイベント

[2018.3.15] 平成29年度 修士論文(優秀論文)発表会のご案内

 一橋大学大学院国際企業戦略研究科では、金融戦略・経営財務(FS)プログラムプログラムを修了予定(平成30年3月修了予定)の学生の代表者による「平成29年度 修士論文(優秀論文)発表会」を開催いたします。

 当イベントは、学内関係者に限らず、学外の方でもご自由にご参加いただけます。また、論文発表会後に10分程度の金融戦略・経営財務(FS)プログラム紹介を行う予定です。本プログラムにご興味・ご関心のある方のご参加も歓迎しています。

多くの方々のご参加を心よりお待ちしております。

概要

<日時>平成30年3月15日(木)

   【開場】18:00
   【論文発表会】18:30 - 19:30
   【コース説明】19:35 - 19:45(終了予定)

<会場 >

   一橋講堂・中会議場(学術総合センター2F )
   [会場住所]東京都千代田区一ツ橋2-1-2

<交通案内>

   ● 東京メトロ東西線 竹橋駅1B出口より徒歩4分
   ● 東京メトロ半蔵門線、都営三田線、都営新宿線 神保町駅A9出口より徒歩3分
   [参照]http://www.fs.ics.hit-u.ac.jp/about/access/

参加申込み 

 【参加料】無料   
 【参加申込】申込みは終了しました
   

<論文発表会プログラム >

論文発表は、2会場で並行して行われます。一論文各20分で各会場3名計6名が発表します。
2会場の行き来、途中参加・退出などは自由です。


≪第1会場≫

18:30~19:30  

  飯塚 賢
「AmihudのIMLファクターを用いた本邦株式市場における流動性リスクプレミアムの実証分析及び貸借銘柄選定による流動性への影響の検証 ‐流動性と企業価値の関係の考察に向けて‐」

【概要】本研究は、本邦株式市場における流動性リスクプレミアムの実証分析及び貸借銘柄への選定が流動性に与える影響の検証を行う。前者においては、AmihudのIMLファクターを用いた分析の結果、IMLが、他のファクターによるリスク調整後にもαを有しており、システマティックリスクが価格付けされることが確認された。後者では、貸借銘柄への選定の有無により相対的な流動性に相違が生じることが確認された。流動性リスクプレミアムの存在が示唆され、企業の取組みが流動性を変化させ得ることから、企業は、流動性の改善に資する対応を取ることで、当該リスクプレミアムの低減を通じ、企業価値の向上を実現することが可能となると考えられる。

  木原 悠介
「確率的高次モーメントを組み込んだStochastic Volatilityモデルの提案:ボラティリティ及び収益率の予測パフォーマンス検証」

【概要】本研究は,確率ボラティリティ(Stochastic Volatility,SV)モデルを拡張し実証分析を行ったものである.モデルの主な拡張点は,誤差分布を一般化双曲型非対称t分布としたこと,高次モーメント(歪度,尖度)を確率的に変動させたこと,高頻度データから計算される実現ボラティリティを組み込んだことである.提案モデルについて市場データ(日本国債先物,日経平均株価指数,S&P500株価指数)を用いた実証分析を行い,標準的なSVモデルと比して資産価格変動をよりよく捉えられ,ボラティリティの予測パフォーマンスが改善することを示した.また,高次モーメントがリターンのリスクプレミアムとして機能している可能性を指摘した.

  杉山 泰平
「バーゼルⅢ適格AdditionalTier1債券(AT1債)に対するプライシングモデルの設定と実証分析―構造型モデルによるアプローチ 」

【概要】バーゼルⅢ適格Additional Tier1債券(AT1債)は,普通社債に比して高水準のクーポンが設定されている一方,発行体が将来被りうる損失を吸収するための様々な契約条件が付されている.そのため投資家は, 発行体のデフォルトリスクに加え,AT1債が有する各種契約条件を考慮した上でプライシングを行うことが求められる.本発表は, 先行研究を拡張したAT1債プライシングモデルの設定手法と,実際に発行されたAT1債を用いた実証分析の概要について述べるものである.設定したモデルを現実世界へ適用させることを通して,主にクレジットリスクの観点からAT1債の特徴について理解を深めていくことを本発表の主眼とする.

≪第2会場≫

18:30~19:30  

  五十嵐 裕美
「クロスボーダーM&Aの決定要因分析~食文化の観点から~」

【概要】M&Aは国内でもクロスボーダーでも、企業価値を上げることができると判断したときに実行される。更に、クロスボーダーM&Aになると、国家間の物理的距離、文化的距離、価値観の違い等の様々な要因がM&Aの成立に影響していることが、多くの先行研究で指摘されている。本稿では生活に欠かせない重要な文化の1つである「食文化」を取り上げ、OLSによりクロスボーダーM&Aの決定要因に及ぼす影響について検証を行った。本分析を通じて、主食・主菜が共通する国家同士では、クロスボーダーM&Aが起こりやすく、「言語、宗教、距離」と同様に、「食文化」という国家的特徴の違いも、クロスボーダーM&Aの決定要因となっているとの示唆が得られた。

  長島 健介
「日本企業の労働組合がもたらす企業パフォーマンスへの影響」

【概要】本稿は、2004年から2016年の国内上場企業における企業別の労働組合有無・組合員数をデータ化し、これまで少ないサンプルや産業別の労働組合組織率で推計されていた労働組合の様々な影響を、企業パフォーマンスの観点で検証した。分析の結果、企業における労働組合の存在はROA・TobinsQともにマイナスの影響があり企業パフォーマンスにマイナスの影響を与えていることが確認された。労働組合の影響力の強さも企業パフォーマンスに同様の影響を与えていることが明らかとなった。日本の労働組合数が減少傾向にある中、企業パフォーマンスにおいてもマイナスの影響が検証され、「働き方改革」が求められる潮流の中で、労働組合の機能・役割があらためて問われていることを示唆している。

  柳澤 政夫
「輸出価格の設定と無形資産ストック:財・仕向地別月次貿易統計を用いた実証分析」

【概要】本研究は、為替レートの変動に対する輸出価格の設定行動が、IT投資や研究開発投資といった知識資産の蓄積度合いとどのような関係を有するかを実証的に検討したものである。分析にあたって、9桁の統計品目番号で分類された財-仕向地レベルの月次の貿易統計データとJIPデータベースの無形資産ストックのデータを用い、観測数が300万件を超える大規模パネルデータを構築した。このデータを用いて、円建て輸出価格の為替レート弾力性をパネル推定手法により識別し、その弾力性の推定値が産業別の無形資産ストックの違いとどのような関係を有しているかを検討した。推定結果から、無形資産ストックの中でも、研究開発に関わる無形資産ストックが大きい産業の財は、円安時に為替レート弾力性が大きくなることが示唆された。

19:35 ~ コース紹介 伊藤 彰敏教授当プログラムディレクター)より説明


なお、今回登壇しませんが、優秀論文に選ばれたその他の方々は以下の通りです。

岡村 光昭
「上場子会社とイノベーションの関連性-特許情報をめぐる実証研究-」

【概要】親子上場は投資家から批判の対象となる一方で、日本社会において今日まで長期にわたって維持されているのには何らかの優位性があるのか。本稿では上場子会社が持つ優位性を過去に出願された出願特許数と引用特許数を用いてイノベーションの観点から検証を行った。分析の結果、上場子会社は出願特許数や引用特許数は親会社やその他独立系企業と比較して上昇する一方で、ブレークスルーの元となる高頻度に引用される特許は、その親会社によって創出されていることを確認した。これにより上場子会社は直近の研究成果が期待できる開発に注力すると共に、親会社が創出した価値の高い基礎技術を幅広く市場に展開する役割を担っていることが示唆された。

夷藤 翔
「ダイナミック非対称tコピュラを用いた新興国国債市場の相互依存構造に関する研究」

【概要】本研究では、新興国国債市場の多変量データにダイナミック非対称tコピュラを適用し、(1)線形の相互依存構造に関する時系列推移、(2)分布の裾での相互依存構造、その上下非対称性に関する有意性、(3)コピュラの違いが投資パフォーマンスに与える影響、(4)高次モーメント・ポートフォリオの構築によるパフォーマンスの改善可能性について、為替変動リスクのヘッジの有無による影響を勘案し、考察した。研究結果から、高次モーメントを考慮した為替ヘッジ付き新興国国債ポートフォリオの構築により、非線形な相互依存構造による負の影響を受けることなく、相対的に高い分散効果、投資パフォーマンスを享受できる、という示唆を得た。

西村 直哉
「超緩和的金融政策下における日本国債の期待超過リターンとリスクプレミアム 」

【概要】本論文は、アフィン型期間構造モデルを用いて日本国債の期待超過リターンを推計し、主要なリスクファクターと債券リターンの関係を分析するものである。分析の結果、日本銀行の超緩和的金融政策により日本国債ポートフォリオの期待超過リターンは大きく押し下げられ、直近ではマイナスになっていることが確認された。さらに、日本国債ポートフォリオの期待超過リターン変動の大半が金利水準のリスクファクターにより説明されることも分かった。これは、日本国債の運用は金利水準に対するポートフォリオリターンの感応度という単一の指標のコントロールにほぼ集約されることを意味しており、日本国債運用のフレームワークを簡素化することに資するであろう。