修了生の活躍

FSの2年間で培った"折れない心"がVCのシビアな勝負を支えている

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ

プリンシパル

渡邉 佑規さん

2013年3月修了

FSで学ぼうと考えた理由は?

佐山展生教授の記事を読んでFS進学を考えた

新卒で三井住友銀行に入行して2年目、経済雑誌で佐山展生先生がプライベート・エクイティについて解説する記事を読んだことがFSを知ったきっかけです。「こういう金融ビジネスがあるんだな、面白そうだな」と感じ、佐山先生のプロフィールを見ると、三井住友銀行のご出身で、FSで教鞭を執っているとあり、「こういう先生の下で学んでみたい」と直感的に思いました。早速、意気揚々とFSの募集要項と修了生の方の論文に目を通したのですが、当時の自分にはあまりにもハードルが高かく、即断念。「ゆくゆくはFSで学べたら」という淡い思いをなんとなく抱くに留まり、第一次FS進学計画はあっさりと幕を閉じました(笑)。

実務経験を重ねた29歳のとき、FS進学という選択肢が再浮上

入行5年目で、社内の公募制度を利用して大和SMBCキャピタルに出向し、希望していたベンチャーキャピタル(VC)業務に携わるようになりました。そのVC業務も2年ほどこなし、何となく一通り業務もこなせるようになった頃、いつくかの問題意識が芽生えます。まず、「どうやったらビジネスパーソンとして2次曲線的な成長ができるのだろう」という点です。少なくとも、このまま業務をこなすだけでは他者を圧倒するようなパフォーマンスは上げられないかもしれないと思うようになりました。それと同時に「日々自分が行っている実務は、アカデミック的または理論的に正しいのだろうか?」という疑問も抱くようになりました。換言すると、日々の実務オペレーションに効率的だけれども盲目的に取り組んでいる自分に疑問を持ったということです。そして最後に、30歳を目前にして長期的なキャリアを考える中、「SMBCの看板に頼って働いている自分が、その看板を下ろした際、本当に価値を出せる人材になっているのだろうか?」という不安を抱くと同時に、「ゆくゆくは看板に頼らないプロフェッショナルになりたい」という思いも次第に強くなっていきました。そこで、キャリアの棚卸をしながら展望を構想する中、再び大学院という選択肢が浮上、一念発起し29歳でFSを受験したという経緯です。

FSで学んだこと、印象に残っていることは?

「再現性のある知恵」と「論理的思考力」が培われた

当然のごとくFSでは「専門的且つ膨大な知識」を得られました。一方、誤解を恐れずに言えば、それ自体が本当の価値とは思っていません。知識は教科書を読めばわかることですし、理論もどんどん新しくなっていくためです。私がFSで得たもので大きかったと実感しているのは三点。一つ目は、ファイナンシャルリテラシーが身についたこと。企業価値、資本コスト、お金の時間価値、ガバナンスと言ったことに関する勘所やモノの考え方を血肉にできたということです。「知識」に対して「再現性がある知恵」と呼べるものofficeで.jpgのサムネイル画像と認識しています。ちなみに、このご時世、ファイナンシャルリテラシーは、金融や財務・会計の専門家だけが知っていれば良いものではなく、プロフェッショナルと名乗るビジネスパーソンが広く普く備えておくべきものと認識しています。実際、FSの修了生や学生には、事業会社の方も多くいらっしゃいます。二つ目は、主に論文の執筆を通じて、論理的思考力が育まれたことです。同時に、考える癖、当たり前を疑う癖も学びました。ある意味予想通りでしたが、実務では当然のことのように扱われているものの、学術的、理論的には間違っていることがたくさんあることに気づきました。実務において、上司や先輩の言うこと、またはマニュアルを鵜呑みにするのではなく、「それって本当に正しいの?」と立ち止まって考える癖が醸成されました。今では、コトの本質を調べるため、海外論文をあたることもあります。最後の三つ目は、仲間、しかもビジネス上の利害を超えた仲間を得たことです。FSの同期・先輩・後輩とのネットワークは、今でも維持、拡張されており、仕事にも役立っています。

FS修了生とのネットワークについて。

異なる業種・職種の修了生と補完関係を築くことができた

あまりビジネスライクなお付き合いだけをしているわけではないのですが(笑)、私の場合、幸いなことにFSネットワークは、仕事で多くの価値を生んでいます。自然な相互扶助の関係が成り立っているという印象です。業種・職種が異なるプロフェッショナルが揃っているため、補完関係を築くことができ、気づきや視野の拡大につながっています。私の場合は、VCの業務を行ううえで、スタートアップへの投資を検討するときに業界の市場リサーチに付き合って頂いたり、投資先を支援するときにアドバイスを求めたりということが日々あります。もちろん、私がVCの専門家として力を貸すこともあります。

年次が離れた先輩や後輩の方々ともFSが企画するイベントやゼミのOB会などで親交を深めるきっかけがあり、私は積極的に顔を出すようにしています。入学時の年齢がバラバラということもあるのかもしれませんが、FSのメンバーは上下関係が基本的にありません。プロフェッショナル同士の対等な関係を築くことができます。今後は、FSの修了生・学生の方々をスタートアップのCFOなどをはじめとしたポジションに引き抜くことも画策しています(笑)。FSのネットワークの拡張に微力ながら関与し、社会的、経済的な価値を上げることで貢献していきたいと考えています。

FS修了後にキャリアはどう変わった?

修了から2年後にメガバンクを飛び出し、転職

2013年にFSを修了し、2015年に国内トップクラスのVCであるグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)に転職しました。FSで学ぶ過程で、ベンチャーキャピタリストとして会社の看板に頼らないキャリアを築いていくことを決めていたため、この転職は既定路線でした。FSでの学びの機会、優秀な同期から受けた刺激がなければ、今の自分はなかったと思います。FSでの厳しい2年間で、自信と、「やればできる!」という折れない心が養われたことが、その後のキャリア形成に大きく影響したのは間違いありません。VCは「3割勝てば優秀」という世界です。それだけに「失敗といかに向き合うか」が問われます。だからこそ、自信と折れない心を得たことはかけがえのない財産です。

FSで学んだことが、現在の業務にどう生かされているか?

ファンドレイジング、デューデリジェンスなど、VCの業務は多岐にわたる

ボトル.jpgVCの仕事は大きく5つのフェーズに分けることができます。一つ目がファンドレイジング。要するに資金集めです。機関投資家に働きかけ、私たちのファンドに投資(コミットメント)をして頂きます。二つ目が、有望なスタートアップを発掘するソーシング活動。三つ目が、投資先の価値やリスクを評価するデューデリジェンスとバリュエーション。四つ目が、ハンズオンと言われる投資先の支援活動。五つ目が、IPOやM&Aなどによって投資した資金を回収するExitです。一案件に、5~7年程度かかることが多く、場合によっては10年をかける案件もある、足の長い仕事です。

テンポラリーCFOとして投資先のスタートアップに関わることも

このようにVCの業務はファイナンスを中心とした経営全般にわたるため、FSでファイナンスを軸に経営全般に関する専門性を強化できたことが様々な場面で生きてきます。例えば、ファンドレイジングの際には、金融のプロ中のプロである機関投資家と共通言語で話し合えることは大きな強みになります。また、ハンズオンのフェーズでは、CFOがいないスタートアップの場合、私がテンポラリーCFOとして参画し、事業計画の策定、ガバナンス構築、経営管理体制の整備をすることもあります。IPOやM&AといったExitイベントの場面でも、FSで学んだことがダイレクトに役立っています。

出願する方にアドバイスをお願いします。

ハイレベルな仲間に囲まれ、やればやるだけ成長できる環境

私は、入学した当初は同期のメンバーの中では末端中の末端でした(笑)。同期と比べると若かったですし、明らかに能力もありませんでした。一方、修了する頃には、上のほうに来られたのではないかと自負しています。FSは、「やる気があればしっかり引き上げてくれる恩師とプログラムを揃えた学び舎」です。ハイレベルな人材に囲まれて切磋琢磨するのはときとして辛さもありますが、互いが刺激しあい、自分一人では成しえない成長につながったと思います。

「少し早いかな」と思うくらいがちょうど良い進学のタイミング

若くて経験が少ない分、苦労はしましたが、結果的には入学の時期としてはちょうど良かったと感じています。当時は「ちょっと早かったかな」とも思ったのですが、今振り返ると、あれより遅かったら、転職のタイミングも逃していたかもしれません。若かった分、心身を削って必死に勉強し、急成長できたという面もあります。したがって、私の経験に則して言えば、大学院に進学するなら、準備を万端に整えてからというよりは、自分ではまだ少し早いと感じるくらいが実は絶好機なのではないかと思います。今後、FSの躍進とネットワーク拡張を引っ張って頂けるような有望なビジネスパーソンの方が一人でも多く、FSの門を叩いてくれることを心から祈念しています。

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