修了生の活躍

ニッセイアセットマネジメント株式会社

運用戦略部ファイナンシャルテクノロジー運用室 シニア・ポートフォリオ・マネージャー

東出 卓朗

2017年3月修了

FSで学ぼうと考えた理由は?

金融商品のプライシングにゆるぎない論拠を、と模索した新人時代

FS入学前は、新卒で入行したメガバンクで為替のインターバンクディーラーとして働いており、主にアルゴリズム取引、通貨オプション、直物為替取引を担当していました。当時は経験から得た勘に基づく取引が主流でしたが、私はクオンティタティブなアプローチでマーケットに対峙していました。そのうち、銀行内でもアルゴリズム取引の機運が高まり、私の主業務はそれまで担当していた通貨オプション・直物為替取引から、アルゴリズム取引へと移っていきました。
大学院への進学を考えるに至った切掛けの一つとなったのが、当時社会人3年目、通貨オプションチームの先輩からいただいたご指導です。「上の人から指摘されたからといって一度自分が行った値決め (プライシング) に変更余地があるなどと思うな」。プライシングは2つの段階で構成されます。まず金融商品のベース部分の価値評価(バリュエーション)を行い、次に需給などの外部環境も勘案して最終的に価格決定します。「この服には1万円支払ってもいい」というように、私たちは日常生活においても無意識にモノやサービスの価格を考えることがあると思いますが、プロフェッショナルとして金融商品の値決めを行うに当たってはこのプロセスを特に意識する必要があります。そうでなくては価格の信頼が失われます。また、プライシングの方法に正解はありません。価格には実績値と理論価格の2種類があり、ここでは後者のことを指します。今思えば先輩は、正解がないからこそ「自分の哲学を持て」ということを教えてくださったのではないかと思います。

クオンツの世界へ進むと決意、本気で向き合うために「アカデミア」へ

higashide2.jpg先輩の言葉に「なにくそ」という気持ちになり、クオンティタティブな世界を極めていこうと奮起しました。学生の頃からクオンティタティブなアプローチをかじっており、また性分に合っていたことから、クオンツの世界へ進むという選択は自然であったかもしれません。アルゴリズム取引なども含めて、投資の分野ではAIの導入が進んでおり、従来よりも幅広い知識が必要となってきました。しかし、独学では限界があり体系的に学べないと感じたこと、同時に、最先端をいくアカデミアはどういうことを言っているのだろうという関心が高まったことから、社会人5年目前後の段階で、大学院で学びたいと思うようになりました。金融を本格的に学べる大学院においては、教授陣の顔ぶれ、プログラムの内容ともにFSが群を抜いていたので、進学先を選ぶにあたってあまり迷いはなかったです。授業があるのは平日夜間でしたが銀行では夜勤が多かったので会社に相談したところ、幸いにも銀行傘下の資産運用会社に出向させてもらえることになりました。入学後は授業のない日もほぼ毎日通学し、夜中の2時、3時まで大学院の図書館で勉強していました。やるからには最大限取り組みたかったので。これは私が社会人2年目に病気で亡くなった父が言い残した、「何故、この世に生を受けたのかを真剣に考えなさい。自分が世の中に貢献できること、本気でやらなければならないことに一生懸命に向き合いなさい。」という言葉がルーツにあります。父もまた、哲学を持つことの重要性を私に伝えていました。

FSで学んだこと、印象に残っていることは?

自分の哲学をもつことの重要性をFSの先生方から学んだ

伝統的なファイナンスから人工知能・機械学習まで幅広く多くのことを体系立てて学ぶことができました。各講義が繋がるようにプログラムが綿密に組まれている点もFSの特徴の一つだと思います。また、論文を執筆する上での先行研究調査もやりやすい環境が整っていました。中でも、FSで学んだことで一番大きかったのは、自分の哲学を持つことの重要性です。学術の世界は一定のレベルから先は正解がない。そこで問われるのは哲学です。指導教官の中村先生や横内先生をはじめ、FSの先生方はそれぞれ哲学がある。そこに大きく影響を受けました。これまで、父、先輩から言われてきたことが一気に繋がった気がしました。私自身は、FSで学ぶ過程で理論の追究を志向するようになり、それが自分の哲学となっています。今はFSで師事した数学者の下で研究をするため、他大学の博士後期課程で確率解析の研究をしています。また人工知能・機械学習の応用についての研究にも取り組んでいます。

WEAI 学会報告の様子 (1).jpgのサムネイル画像WEAI 学会報告の様子

FSで学んだことが、現在の業務にどう生かされているか?

FSで「哲学」形成までのプロセスを繰り返し鍛えてきたことで、仕事に根拠と自信が持てるようになった

自分の哲学を得たことはファンドマネージャーの仕事にも影響しました。相場の動きが一時的なゆらぎなのか、本流が変わりつつあるのか、根拠と自信をもって判断できるようになりましたね。また、現在はより大きい裁量で仕事を出来る会社に転職し、引き続きクオンツファンドマネージャーの仕事をしています。ところで、これまでに「哲学」という言葉を繰り返し述べてきましたが、これは決して自分の好き勝手をしてよいという意味ではありません。「守破離」という言葉が武道にあります。まず先人の教えを守り、次に独創性によって型を破り、自分自身の哲学を形成していくという意味です。論文を執筆するということは、この一連のプロセスの繰り返しだと思っています。FSではこのプロセスを徹底的に少人数のゼミで鍛えていきます。FSのユニークさは、まさにここにあります。論文執筆を通じて身に着けた思考力は、あらゆる局面で応用が効くかけがえのない力だと思います。また、"自分の哲学を持つ"という言葉が自分のものになったのも、FSを卒業する頃でした。それまでは、哲学といってもそこまでしっくりきていなかったと思います。

出願する方にアドバイスをお願いします。

定量的なアプローチに文系も理系も関係ないことを注意しておきたいです。例えば、文系だから定量的に評価できなくて良い、などといったことは決してないはずです。最近では、文理融合という言葉もあります。キャリアの途中で大学院進学を検討している人たちに考えてほしいのは、何を哲学として成長したいのかということ。それが定量的なものならFSはお勧めです。

過去のゲストスピーカーはこちら