修了生の活躍

起業して、自分の欲しいプロダクトの是非を世に問う

株式会社ブルームスキーム

代表取締役CEO

中里裕史

2014年3月修了

起業した会社について教えてください

欲しいプロダクトを作って世の中に問う

2016年3月に株式会社ブルームスキームという会社を立ち上げて、代表取締役CEOをしています。3D試着サービスを開発、提供する会社ですが、2018年より資金調達や特許出願、業務提携先開拓など本格稼働を始め、現在プロダクトはβ版が完成しています。プロダクト「kimakuri」は人工知能と3Dスキャニングの技術を駆使した試着サービスで、写真2枚から自分にそっくりな3Dアバターを作り、3Dスキャンした服を着せ、自分に似合う服かどうかを試せるプロダクトです。また、それだけではなく「どういう体型をしている人に、どういう服を着せると、どの様に見えるのか、似合うのか似合わないのか」というところを実験できるプロダクトでもあります。僕の根源的欲求は、それぞれの人が自分に似合う服を瞬時に見付けられるようなプロダクトを作るという事です。ですので、この起業は、自分の欲しいプロダクトを作って世の中に問うているという感覚に近いです。

れまでのキャリアは?

戦略コンサルタントから起業へ

新卒でIBMのコンサルティング会社に入り、コンサルタントとしてITコンサルティングを、その後戦略系のプロジェクトで戦略コンサルティングをやりました。戦略部門では物流の戦略や営業戦略、最上層の事業戦略など広く担当しましたが、コンサルティングは主観的な作業が多いと感じ、2年強で会社をやめました。多少貯金もできたので、直後は転職せず、興味のおもむくまま本を読んでいました。『フィナンシャルエンジニアリング』(ジョン ハル)や、『金融工学入門』(ルーエンバーガー)を読み直したりしましたが、独学ではなくMBAに進学することを考えるようになりました。

入学時は勤務していませんでしたが、M2の頃からは大学時代の同級生が起こしたビジネスを手伝い始めました。彼は技術者で、僕はビジネスファーム全般を担当し、卒業後も1年程そのmicrobaseで仕事をしました。

その後、㈱ブルームスキームを起業するまでは、フリーランスのコンサルをして資金を作りながら、様々な取引戦略のバックテストを簡単にできるWebサービスを作ってみたり、それを中川先生に見てもらったり、色々なサイドビジネスも試し、試行錯誤しました。

FSで学ぼうと思われたのはなぜですか?

「人の行動を数理的に記述したい」欲求から

NAKASATO 1.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像前出の様に会社を辞したあと、"人の行動を数理的に記述すること"に集中して、それだけを考える生活をしようと、大学院への進学を決めました。数理モデルで人間の振る舞いを記述できる部分があれば、事業経営で活用できる可能性があり、一番 数理モデルで記述しやすい分野は金融市場ではないか、勝ち負けがはっきりしていて、それがデータにも表れていて最終的には価格で全て表せるのではないか、とその時は考えました。そしてアカデミックな私の欲求に一番答えていただけそうな一橋大学大学院 金融戦略・経営財務コース(当時)に進むことにしました。実際に入学してみると、先生方がアカデミックなだけではなく、同級生も実務家ではあるけれどアカデミックに関心が高い方々が集まっていました。最年少に近い年齢で入学しましたが、非常に刺激を受け、とても楽しいと感じることのできる環境でした。

FSでの学びは起業に役立ったのでしょうか

発想を形にして見せることで、起業仲間を集める

 現在のアプリの発想は、2010年頃からぼんやりと持っていたのですが、当時は技術的に、まだ実現は困難でした。それが2017年の5月くらいに、3Dスキャニングの技術や人工知能技術が飛躍的に進展してきて、うまく組み合わせれば写真からユーザーにそっくりなアバターが簡単に作れ、そこに様々な3Dの服を着せて似合うかどうか判断するアプリは作れると思い至り、プロトタイプを自分で作りました。

それまでエンジニアのキャリアはほとんどなく、自分でゼロから作ったと言えるのは、FS修了後に株式の取引戦略をバックテストするアプリを作った時でした。

その基礎となったのが、在学中、修士論文執筆のためにデータサイエンス系の科目で学ぶRでプログラムを書いた事でしょうか。ペアトレーディングをシミュレートしたかったので、プログラムに取引戦略を落とし、時系列データをどの様に扱えば取引戦略が作れるのか研究しました。そういう過程を経ましたので、論文執筆終盤にはバックテストユースのプログラムは作れるようになっていました。

当初はこのアプリの発想をWebアプリにするために、いろんなエンジニアに「作れない?」と声をかけて周ったのですが、一様に「作るのは難しい」と言う回答でした。そこで、自分で作るしかないとPythonで書いてプロトタイプを作り上げました。株式の取引戦略のバックテストを作った際の知識が生きました。そのプログラムを見てやっと数人が関心を示してくれるようになり、仲間を集め、実際に起業する事ができました。

FSで学んで良かったところは何でしょうか

ビジネススクールという枠に囚われない深い学びの中から数理モデルの限界も知る

 ビジネスマンだからといって手加減せずに、アカデミックなところをきちんと教えていただけるというところですね。例えば中村先生の『投資戦略論』は、物理学で使われるような方程式を使った取引戦略の構築について教えていただけるのですが、研究論文レベルの話であって、ドクター向けの教科書などでも載らないような内容を、教室でただし、我々にも理解できるような形で、かみ砕いてご説明いただけるので、ビジネススクールという枠に囚われず非常に深いものを提供いただいています。

実務をやりながらではなく、それしかやってない人間が行っても、十分に楽しめる(?)深い内容です。このことは、かなり重要かなと思っています。

一方で、数理モデルの限界も知ることができたので、世の中に氾濫してる「数理モデルでこう出しました」などのレポートも、玉石混合の中、ミスリードしないようにできるようにもなりました。

これからMBAを目指す方にアドバイスをお願いします

明確な目的意識を持って学ぶと身に付くものも大きい

何のためにビジネスをやるか次第ですが、僕は世の中にインパクトを与えるような何かをやりたいという意識があります。そのためにはまず、"世の中でどういうことが起こっているか"を定量的に理解して、そこから"自分が進むべき道"を、自分で納得のいく形で導き出すというスキルが大事だと思っています。そのようなスキルを身に付けるためには、ここでやることは非常に役に立つのではないかと思います。

また、入学して何をやり、結果として何を白黒はっきりさせたいのか という目的を明確に持って入ったほうが楽しいのではないかと思います。明確な目的意識を持っていると身に付くものも多いのではないでしょうか。

NAKASATO 3.jpg

※本記事の内容、肩書き等は2019年5月当時のものです。

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