リレーエッセイ

ゼミ探訪「本多ゼミ紹介」

本多 俊毅 教授

少人数ゼミは本プログラムの特色であり、学生は、2年間必ずどこかのゼミに所属します。ゼミの規模は、通常では5-6人です。ゼミは毎週月曜日に行わ れ、学生の問題意識を深めるために文献を輪読したり自身の学位論文研究について報告した上で、ゼミ教員や他のメンバーと活発な議論を重ねながら、 最終的に学位論文を仕上げていきます。

2018年12月25日

_D5A6167.jpg本多ゼミには、株式や債券など、いわゆる証券投資に関わるテーマで学位論文を書こうとする学生が多く集まります。職種は、資産運用会社、銀行や保険などで証券投資業務を行なっている方などが多く、ゼミでよく扱われるテーマとしては資産価格モデルの実証研究があります。資産価格モデルと言うと素っ気ない印象を持つかもしれませんが、実際の分析対象はさまざまです。一例をあげるためにこれまでの修了生が取り組んできたテーマを思い出すだけでも、さまざまなテーマが思いつきます。株式市場のアノマリーの研究、マルチファクターモデルを用いたファクター投資、金利モデルを用いた債券市場の分析、株価や金利の予測可能性、投資信託やヘッジファンドといったファンドマネージャーのパフォーマンス評価、為替市場の実証研究、株式市場の取引コストや流動性に関する研究などがあります。これらに加えて、企業の資本構成やリアルオプションといったコーポレートファイナンスのテーマが取り上げられることもありますし、最近ですとテキスト情報を用いたリターン分析に興味を持つ方もいます。このように、資産運用関係が中心ではありますが、それにとどまらずさまざまなテーマを持った方がゼミに参加しています。

本棚.jpgのサムネイル画像ゼミのスケジュールについては、他のゼミとさほど大きな違いはないと思います。1年目は問題意識を明確化し、関連する文献を探してゆきます。分析のうえでお手本にできるような論文を探すのが目的です。同時に、必要なデータ分析技術や統計手法の理解を進め、2年目には実際にデータを収集して分析作業を進め、論文の完成をめざします。

上で紹介したテーマからわかるかもしれませんが、証券投資といっても、これからの有望銘柄を探そうといった株式の個別銘柄選択のテーマというよりは、資産規模の大きなポートフォリオ構築やリスク管理、アセット・アロケーションに関わるテーマを扱うことが多いようです。相場の方向性を当てたり、値上がりする銘柄を探し出すのに役にたつ手法を学びたいという方も多いかもしれませんが、この分野で研究を進めてゆけばゆくほど、最強の投資術といった類の投資手法の存在には否定的にならざるをえませんし、優れたファンドマネージャーを事前に探し出すことがいかに難しいかということを感じるようになります。もしかしたら失望してしまう方が多いかもしれませんが、高い確率で勝てる投資手法を学ぼうというゼミではありません。仮にそういった素晴らしい技術や能力を私が持っているとしても、そのノウハウをみなさんに大公開するほど、私は親切な人間ではありません。また、持っていない技術や能力をあたかも持っているかのように授業やゼミで指導するほど厚かましい人間でもありません。より良い投資手法やリスク管理手法を求めて勉強をしてゆくことを否定しているわけではありません。「俺ならマーケットに勝てる」という希望的確信を出発点におくのではなく、「マーケットに勝ち続けるのはなかなかむずかしいよな」という現実的判断を議論や出発点とするということです。

今後のキャリア形成の核になるようなことを、本プログラムに在籍している間に獲得してほしいと思いますし、ゼミや授業でそのお手伝いができればと思っています。資産運用業に関わってキャリアを積み上げてゆこうとすれば、大きな市場変動になんども翻弄されることになるでしょう。そういったときには、自らの投資哲学や資産市場に対する基本的な考えを確認することが必要になるはずです。ゼミや授業で勉強したことが、自らの考えを整理するうえでの出発点のひとつとなれば良いなと思います。

本プログラムでは毎週、月曜の夜にゼミを行います。学生のみなさんはお仕事で忙しい方々ですので、同期のゼミのメンバーで飲み会を開催したりといった機会は頻繁ではないようですが、授業の宿題に取り組んだり、仕事の状況を語りあったりしている様子を見ておりますと、大変そうですが充実した時間を過ごしていることがわかります。一緒に勉学に励む仲間を得るということは貴重なことですね。

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アジアファイナンス学会、おつかれさまでした
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