Fin Techゲストスピーカー

大企業とスタートアップのコラボレーション

マネックスグループ株式会社 執行役員 新事業企画室長

マネックスベンチャーズ株式会社 取締役

高岡 美緒 氏 氏

2017年01月11日

経歴

英国ケンブリッジ大学自然科学部物理学科卒業。ゴールドマン・サックス証券、モルガン・スタンレー証券(現モルガンスタンレーMUFG証券)などを経て2009年にマネックスグループに入社。主に同社の国内外買収案件や戦略投資を執行。 現在はマネックスベンチャーズのCVC運営及びマネックスグループの新規事業立ち上げを担当。 ・2016年、Fintech Asia 100 Leaders(アジアを代表するフィンテックリーダー100人)の一人に選出
・金融革新同友会(FINOVATORS=金融イノベーションのエコシ ステム形成を願うプロボノ団体 )発起人
・経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」委員
・金融イノベーションビジネスカンファレンスFIBC Fintech分野で日本唯一のピッチコンテスト2015年、2016年審査員
・自民党 金融調査会 「フィンテックに関してのヒアリング」 講師

2016年1月11日のゲストスピーカーは、マネックスグループ株式会社の執行役員・新事業企画室長の高岡美緒氏にご登壇いただきました。

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FinTechをどうとらえるか

FinTechは第4次産業革命という大きな流れの現象のひとつであると言われます。高岡氏は「産業革命とは、人々の生活や仕事の仕方が大きく変革する分岐点のことを指し、その結果さまざまな産業が破壊される」と指摘します。例えば、インターネット証券の登場をFinTech1.0と位置付けると、このFinTech1.0により、顧客と接点を持つ営業マンや店舗の必要性が無くなりました。

高岡氏によれば、こうした第4次産業革命の背後にある技術革新は「顧客の変化と競争環境の変化を生じさせる」といいます。この変化は主として3つあり、①いつでも、どこでも直感的にサービスを体験できることによる「顧客の行動変化」、②テクノロジーを活用できる層が一般化することによる「個人間の意思疎通の容易さ」、③データの取得や利用、加工が安価になることによる「新規参入コストの低下」です。

企業としての取り組み

上記3つ目で指摘された競争環境の変化に対応するべく、マネックスグループは「生き残るためには非連続的なイノベーションを作り出す必要がある」との考えに立ち、外部リソースを活用したオープン・イノベーションに積極的に取り組んでいるとのこと。具体的には、マネックス・ベンチャーズを設立し、スピーディーな投資を可能にするとともに、日本の金融関連ベンチャーを代表するメンバーにアドバイザーになってもらうことを通じて情報発信力を高めているといいます。また、低リスクかつ柔軟な投資決定を行うために、VC投資よりもアクティブなCVC投資を採用しています。FinTechによる新たなビジネスモデルがいまだ確立されておらず、ディスラプションサイクルの初期にあたる現状では、R&D機能と情報収集を戦略的な主眼においているとのことです。

高岡氏は、こうした取り組みを通じて①FinTech企業とのディールフロー、②新規参入者やトレンドに関する情報収集、③提携先開拓による事業開発、③投資の成功という「良い循環が形成されつつある」と、マネックスグループの投資戦略の成果を総括しました。

今後の展望

 高岡氏は「垂直統合から水平統合へと移行し、各サービスに金融機関が組み込まれるようになる」との認識に立ち、金融産業の再構築がさらに進むと予想します。従来は証券会社や銀行が各々に顧客との接点を持っていましたが、今後は、顧客との接点やニーズの吸い上げをFinTech企業が代行する一方、既存金融機関がサービスの維持・管理機能を担いつつ、相互に水平的につながりあうというイメージです。こうした金融産業の再構築により、「いままで1対nであった金融機関と顧客の関係性がn対nとなることで、サービスの個別化が実現する」と高岡氏は指摘します。

 高岡氏はまた、FinTechにおける顧客接点およびプロダクト、インフラの各層の事業においてもAIの活用が重要になることを強調されました。

 シリコンバレーへの投資に関して企業文化の違いにより苦労なさった経験や、エコシステムの希薄さゆえに日本でイノベーションを創造することの難しさなど、さまざまな話題をまじえながら、最後に高岡氏は「失敗の許容こそイノベーションの源泉である」という点を強調なさいました。FinTech後進国と言われる日本において、イノベーションとそれを生み出す環境の重要性を再認識させられる講義となりました。

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