ゲストスピーカーのご紹介

演題「よい経営者とは」

キュービーネット株式会社

代表取締役社長

北野 泰男 氏

2015年11月15日

 佐山展生教授の「企業価値向上論」のゲストスピーカーとして2015年11月10日キュービーネット株式会社代表取締役社長、北野泰男氏が登壇され、「よい経営者とは」というテーマで講演されました。日本債券信用銀行に10年近く勤務された後、カット専門店QBハウスの店舗運営およびフランチャイズ事業を国内外に展開するキュービーネット株式会社に転職され、いくつもの管理職兼務を経て社長となられた北野さんのこれまでの軌跡、経営改革の取り組み、経営理念についてお話を伺います。

北野泰男さん プロフィール
1969年大阪府東大阪市生まれ。大阪外国語大学卒業後、株式会社日本債券信用銀行(現:あおぞら銀行)入行。2005年キュービーネット株式会社に入社。部長、副社長を歴任し、2009年より現職。

キュービーネット株式会社の概要
1995年設立。創業者は小西國義氏。「10分、1000円」の短時間・低価格でヘアカットを提供するQBハウスを展開。ニュービジネス大賞通商産業大臣賞受賞。現在、国内外に594店舗、10坪程度の区画で駅を中心に全国展開。

■20代前半の海外放浪で芽生えた経営意識と日債銀での学び

 北野氏の経営者としての萌芽は、20代前半で海外を放浪した体験にあるそうです。バブルがはじけ、ベルリンの壁が崩れて、時代は転換期に差し掛かっていました。北野青年は、海外で出会った同世代の意識の高さに触発されます。また、日本を離れて初めて日本の本当の良さに気付きます。将来、日本では当たり前の消費財やサービスを海外に輸出したい、という意識も宿りました。
当時はもちろん現地で散髪していましたが、なかなか思うようにはならない。日本の散髪技術は早晩、海外で求められるだろうという着想も、この「放浪時代」に芽生えました。DSC03289
 1995年に帰国し、10年後の起業を目指して金融を学びたい、という意向から日本債券銀行に入行。事業法人融資を担当し、次第にM&Aにも関心を寄せられます。バブル崩壊後の一連の経験から北野氏は、「企業とは原則として倒産するものだ」と認識されます。そのうえ倒産の理由は「自滅」であり、経営とは「継続して栄えることを目指す行為だ」と捉えられました。銀行勤務時代は、北野氏にとって非常に大きな学びの時期でした。
「次」を考えたとき浮上したのが、キュービーネット株式会社でした。

■経営体制を整えて、代表取締役へ

 2005年2月、キュービーネット入社。北野氏は入社早々、財務部長兼総務部長兼経営企画室長に就任されます。資本政策の再構築、海外経営の立 て直し、係争案件の解決、上場準備が課せられた任務でした。しかし、当時は、出店しながらの経営体制を強化――非常にハードな状況です。北野氏は、この状 況を自身のよき試練と受け止めて一つ一つ果敢に対処されます。その後、資本政策の再構築、海外経営の立て直し、組織体制の変化などに取り組んで、2009 年、北野氏は代表取締役社長に就任されました。

■よい経営者とは何か

「よい経営者をわかりやすくするために、悪い経営者を考えてみます。悪い経営者とは人を軽んじる経営者です。優しくするとか、厳しくするという次元ではありません。嘘や不誠実、契約不履行など、明らかに人を軽んじる経営者は存在します。ですから、逆によい経営者とは人を重んじる経営者です。追い込まれたときに人を重んじる判断ができる経営者。これが、私が経験から導き出した答えです」
 北野氏はキュービーネットで様々な経営課題を改善し、新システム構築への投資も行っておられます。QBハウスの再成長のイメージを具体的に描き、それを達成する。まだまだやり残していることがあります―--そう言う北野氏の取り組まれた事例をいくつか挙げます。

――まさに全身でビジネスに取り組んでおられる北野氏の言葉には、質量があります。厳しいご体験から経営の要諦を汲み取ってこられた北野氏への佐山教授の信頼は厚く、講演は受講者にとって非常に示唆に富むものでした。