2019年02月18日

修了生向けイベント 入試関連イベント

[2019.3.15] 平成30年度 修士論文(優秀論文)発表会のご案内

 一橋大学大学院経営管理研究科では、金融戦略・経営財務(FS)プログラムを修了予定(平成31年3月修了予定)の学生の代表者による「平成30年度 修士論文(優秀論文)発表会」を開催いたします。

 当イベントは、学内関係者に限らず、学外の方でもご自由にご参加いただけます。また、論文発表会後に10分程度の金融戦略・経営財務(FS)プログラム紹介を行う予定です。本プログラムにご興味・ご関心のある方のご参加も歓迎しています。

多くの方々のご参加を心よりお待ちしております。

概要

<日時>平成31年3月15日(金)
   【開場】18:00
   【論文発表会】18:30 - 19:30
   【プログラム説明】19:35 - 19:45(終了予定)

<会場 >
   一橋講堂・中会議場(学術総合センター2F )

   [会場住所]東京都千代田区一ツ橋2-1-2
   ・東京メトロ東西線 竹橋駅1B出口より徒歩4分
   ・東京メトロ半蔵門線、都営三田線、都営新宿線 神保町駅A9出口より徒歩3分

参加申込み 

 【参加料】無料   
 【参加申込】お申込みは終了しました。

  (間に合わなかった方は直接受付にてお申し出ください)

<論文発表会プログラム>

論文発表は、2会場で並行して行われます。一論文各20分で各会場3名計6名が発表します。
2会場の行き来、途中参加・退出などは自由です。


≪第1会場≫

18:30-18:50 :岩井達矢
金利期間構造に含まれる情報---主要先進国の債券市場データを用いた検証
本研究は、現在の金利期間構造に将来の金利と将来の超過リターンに関するすべての情報が含まれるとするSpanning仮説を検証するものである。このため、将来の超過リターンに対する追加的な予測力を有する変数が存在するかを、予測回帰を用いて分析した。分析の結果、自国のマクロ変数および海外マクロ変数の、将来の超過リターンに対する関係性は認められるものの、追加的な予測力は確認することができなかった。一方で、海外金利期間構造は、自国の債券超過リターンに対する追加的な予測力を持つことが確認できた。研究結果から、海外の金利期間構造が債券資本市場を通して自国のタームプレミアムに影響を与えるとの示唆を得ることができた。

18:50-19:10 :山下大
Multivariate Realized Stochastic Volatility Models with Dynamic Correlation and Skew Distribution: Bayesian Analysis and Application to Risk Management
本研究では, 多変量確率ボラティリティ (MSV) モデルを用いて, 複数の資産リターン間の相関構造が確率的に変動するリスク (相関リスク) や, リターンの非対称性リスク (skewリスク) について分析する. また, ベイズ推定の枠組みを利用することで, MSVモデルをリスク管理実務で活用する手法を提案する.
米個別株価およびその高頻度取引データから推定した実現ボラティリティを用いた実証分析により, skewの有意性のほか, 特に, skewを埋め込んだWishart型MSVモデルの有用性が明らかになった. また, MSVモデルを用いたベイジアンシミュレーションによるシナリオ生成および欠測データ補完手法が示された.

19:10-19:30 :土居晶
アノマリー投資の取引コスト~日本株市場における実証分析
本研究は、流動性の限界や取引コストなど、実運用上の限界を加味したアノマリー投資の日本株市場における実証検証を目的としている。検証にあたり、対象企業は市場参加者が概ね無理なく投資できる東証株価指数の採用銘柄とした。また、取引コストは株価リターンを基に推計するLesmondのLDVモデルを用いて算出した。その結果、全てのアノマリーでプラスのグロスリターンが確認された。売買コストを加味するとリバランス頻度の高いアノマリーを中心にマイナスのネットリターンとなった。そこで、コスト削減を目的とした改良を加えた。しかし、それらの結果は限定的であり、より有効的な方法を導入する必要性が確認された。

≪第2会場≫

18:30-18:50 :窪田雄太
Country Reputation Loss Effect by Firms' Fraud:Evidence from US ADR Market
国単位の集団的名声損失:米国預託証券市場での実証

本論文は、各国を代表する企業の不正が国単位の集団的名声(Country Reputation)に損失を与えることを実証するものである。その目的は、Tirole(1996)が提唱した集団的名声の具体的証拠として、既存研究にない「国単位の名声」を提示することである。具体的には、米国司法省等が調査した各国企業の不正案件を自然実験と捉え、その不正ショックが同一国の銘柄全体へ与えた影響を米国預託証券(ADR)の超過収益率で検証した。分析の結果、不正企業によるショックは国全体の銘柄へ-0.35%の損失インパクトを与えたことを確認し、国単位の集団的名声の存在を示した。また、国単位の名声への影響度は国によって差があり、高い名声がある国ほど波及的損失は減少することを示唆した。

18:50-19:10 :轟貴久
取締役の海外実務経験がクロスボーダーM&Aに与える影響
本稿では、日本企業における海外実務経験を有する取締役の存在が、その所属企業のクロスボーダーM&Aの実施やパフォーマンスに与える影響について検証した。分析の結果、海外実務経験を有する日本人取締役がいる企業は、クロスボーダーM&Aを実施する傾向が強く、また、大企業以外については、海外実務経験を有する日本人取締役がいる企業が実施するクロスボーダーM&Aは、そのパフォーマンスがよく、企業価値を高めることが確認された。本結果より、日本企業によるクロスボーダーM&Aの成功率を上げるためには、経営幹部候補者への海外実務経験の機会の提供や、海外実務経験者を取締役や経営陣に入れ、その知見を活かすことが重要であるとの示唆を得た。

19:10-19:30 :滝澤あい
関連当事者取引の解消が企業パフォーマンスに及ばす影響
経営者が企業と行う関連当事者取引は、企業にとってプラス・マイナスの両側面が存在する。本研究は、2004年から2007年に新規上場した日本企業で、新規上場に際し関連当事者取引を解消した企業をサンプルとして、関連当事者取引解消が企業パフォーマンスに及ぼす影響を検証した。分析の結果、関連当事者取引を解消した企業は、取引解消前後でROAの上昇が大きくなることが示され、関連当事者取引が企業パフォーマンスに負の影響を及ぼしていた可能性を指摘した。また、有利子負債比率の高い企業や無形固定資産比率の高い企業では、取引解消前後でのROA上昇が限定的となり、これらの企業が行う関連当事者取引は効率的な側面が大きいとの示唆が得られた。

19:35 ~  :金融戦略・経営財務(FS)プログラム紹介 伊藤 彰敏教授当プログラムディレクター)より説明


なお、今回登壇しませんが、優秀論文に選ばれたその他の方々は以下の通りです。

穴井宏和
高齢化に伴う空き家増が地価に与える影響 地域による違い、再開発効果、外国人流入効果を考慮した分析
社会問題化する空き家増が住宅地価に及ぼす影響を実証分析した。首都圏を都心、都心周辺、郊外に3分割、それぞれのエリアでの「高齢化に伴う空き家増が住宅地価に及ぼす影響」を推定、再開発・外国人流入効果も考慮した。また、内生性の問題に対処するため操作変数法を採用。分析結果から、地価が「空き家によって下がり易い市区」、「空き家の影響をあまり受けない市区」に分かれることが確認された。外国人流入は、住宅需要増加を通して「空き家による地価下落」を抑制する効果があることも示唆された。

池田研介
Close-out Amount の違いによるXVAへの影響分析
本研究では、デリバティブ価値評価において、デフォルト時の清算金額を意味するClose-out Amountの仮定の違いが、取引相手および自身の信用リスクや資金調達コストにかかる評価調整(XVA)にどのような影響を及ぼすかを分析している。まず、デフォルトしていない取引当事者のXVAがClose-out Amountに含まれると仮定した場合のXVA評価式を準複製戦略に基づいて導出し、その数値計算手法を提案した。次に、具体的なケースとして、様々な条件下でのXVAの数値的分析を行い、一定の条件下ではClose-out Amountの仮定の違いがXVAに小さくない影響を与えることが確認できた。

鴨下智
東証電気機器株価指数を例としたword2vecによる情報理論の検証
本研究では、新聞記事が株式市場に与える影響について、東証電気機器株価指数を例として分析を行った。先行研究では、新聞記事等やそれらに含まれる単語に対し、極性を付与することにより分析することが主であった。しかし、極性を付与する場合、特定個人の主観に依存する可能性があることや、大量のデータや新語に対応しづらいという実務上のデメリットが存在する。そのため、本研究ではテキストマイニングの手法であるword2vecを用いて新聞記事に含まれる単語の分散表現を推定し、分散表現から各新聞記事の指標を作成することで、極性を用いずに分析を行った。結果、新聞記事が株式市場にとって本質的な情報を持つという仮説:情報理論が支持された。

冨島佑允
Variance Risk Premia: Theoretical and Empirical Evidence of Return Predictability
実現分散とリスク中立分散の差として定義されるバリアンス・リスク・プレミアム(VRP)は、原資産リターンの優れた予測因子として知られている。本研究の目的は、原資産リターンおよびリターン分散のダイナミクスにモデルを仮定することによって、理論・実証の両面から予測力の裏付けを得ることである。VRP を説明変数とする予測回帰の決定係数(R2)は、山形の期間構造を持つことが先行研究により判明している。本研究では、2-factor SVモデルに基づくアフィン型のVRPにおいても山形の期間構造が再現され、そのピーク値がレバレッジ・パラメータに依存することを確認した。さらに株価データを用いた実証研究を行い、山形の期間構造を再現することが出来た。

吉田太郎
想定為替レートと経営者予想の予想精度および予測誤差
本稿では、想定為替レートの開示と予測精度が経営者予想に与える影響について検証した。実証分析から、次の3点が解明された。第1に、想定為替レート開示要因としてガバナンス構造や企業の成熟度が影響している。第2に、想定為替レート開示企業は、非開示企業よりも経営者予想精度が高く、悲観的な予想を開示している。第3に、想定為替レートの予想精度と経営者予想精度は必ずしも連動せず、予測誤差が小さくても、誤差が円高か円安によって、企業は業績予想達成に向けて、取りうる対応が異なることが確認された。本分析を通じて、開示要請のない非財務情報を自発的に開示するという企業特性が経営者予想の精度を高めるとの示唆が得られた。