2021年03月01日

セミナー告知 修了生向けイベント 活動報告

[2021.3.23] 2020年度 修士論文(優秀論文)発表会のご案内

 金融戦略・経営財務(FS)プログラムを修了予定(2021年3月修了予定)の学生の代表者による「2020年度 修士論文(優秀論文)発表会」を開催いたします。当イベントは、学内関係者に限らず、学外の方でもご自由にご参加いただけます。本プログラムにご興味・ご関心のある方のご参加を歓迎しています。多くの方々のご参加を心よりお待ちしております。

【概要】


日時:2021年3月23日(火) 18:00 - 20:10   

ツール :ZOOM会議など

参加申込:お申込みはこちらのフォームから

【発表論文


※各20分目安で6件の論文発表を行います。発表の順番は下記の通りです。

18:00 ご挨拶 本多俊毅 プログラムディレクター/教授 

<計量系>
18:02 臼井 健人(本多ゼミ)
 個別銘柄のリターン分布:日本株式市場におけるディスポジション効果の検証

本研究は、日本株式市場における個別銘柄のリターン分布と投資家行動について検証した。個別銘柄のリターンのクロスセクション分布には正の歪度が存在し、株式市場への投資が生み出す超過リターンは一部の銘柄が実現した高いリターンによってもたらされるが、ディスポジション効果の存在により、投資家がこれらのリターンを享受できていない可能性が示唆された。また、投資家が含み損を抱える銘柄ではリスクが低い銘柄ほど将来リターンが高い傾向が有意に観察された一方で、含み益を抱える銘柄ではこの傾向は有意ではなく、投資家が損失局面でリスク愛好的、利益局面でリスク回避的となるプロスペクト理論から導かれる心理バイアスの影響がひとつの解釈として考えられる。

18:27 北村 博康(中村ゼミ)
 確率的歪度と確率的レバレッジ効果を用いた資産選択,及び高次モーメントを用いたポートフォリオ最適化

本研究では、マルチアセットでの効果的なポートフォリオ構築を目的に、歪度等の高次モーメントを用いたアプローチで、資産(銘柄)選択と最適化の2つの側面から分析を行った。資産横断での銘柄選択では、確率的歪度のネガティブな変化を活用することの有効性を確認するとともに、歪度とレバレッジ効果(収益率とボラティリティの相関)の関係性や、確率的歪度及び確率的レバレッジ効果の時変的挙動の特徴について考察を行った。高次モーメントを用いた最適化手法では、高頻度データから求めた高次の実現モーメントや、多変量実現確率的ボラティリティモデルの推計結果を用いる効果を検証し、実現モーメントの組込みに効果がみられることを確認した。

18:46 八木 厚樹(横内ゼミ)
 クロスアセットにおけるボラティリティの依存構造の特徴とそのインプリケーション

本研究は,本邦投資家の立場から見たクロスアセットにおけるボラティリティの依存構造を定量化し,その構造的特徴の確認,および国際分散投資へのインプリケーションを考察したものである.イントラデイデータを用いて推定した広範な資産の実現ボラティリティを分析対象とし,Diebold and Yilmaz[2014]にて定式化されたネットワークの定量化手法を用いて依存構造を把握した.主要な結果として,先進国為替・欧米株式・米国中長期債券がボラティリティの依存構造において支配的である一方で,一部の新興国株式・Soft を中心としたコモディティが従属的であること,また,上記の関係は期間を通して安定的であり,リスクオフ時にはボラティリティの伝播が異なるアセットクラス間にて高まる傾向があることなどが確認された.

<財務系>
19:06 前田 善博(鈴木ゼミ)
 株主総会における土産の廃止が与える影響

本研究は、2019 年まで上場企業の多くが行っていた株主総会における来場者への土産に着目し、その廃止が企業の株主数の増加率及びCEO 選任議案の賛成率に与える影響について考察、分析を行った。具体的には 2011 年から2018 年に株主総会の土産を廃止した392 社を対象に、回帰分析、傾向スコアマッチン グ、差分の差(DiD)による分析を行った。その結果、土産を廃止した企業は、その直後の年の株主数の増加率が低減すること、また、その直後の株主総会の CEO 選任議案の賛成率が上昇することを支持する検証結果となった。このような影響が生じる背景には、土産を期待する個人株主と、土産の廃止を支持する機関投資家の対立がある可能性を示唆している。

19:26 羽渕 峻行(野間ゼミ) 
 IFRSの任意適用と研究開発投資

本研究では,日本企業を対象として,会計基準の選択によって企業の研究開発投資がどのように変化するかを分析した。まず,IFRS任意適用の要因を分析した結果,研究開発投資比率が高い企業ほど,IFRSを任意適用しやすい傾向があることが示された。また,IFRS任意適用企業はIFRSの適用後,研究開発投資の比率を増加させる傾向があることが示された。これは,IFRSの適用によって,開発費の一部資産化が可能となり,研究開発投資を増やすインセンティブが働いたことが一因と考えられる。研究開発投資を資産計上できるということは,投資家に対して研究開発投資の価値を目に見える形で提示でき,研究開発投資の不確実性を下げ,企業の成長投資を促進できる可能性がある。

19:47 蒋 彦文(伊藤ゼミ) 
 Geographic distance, cultural distance, and political hazards: roles of firm size,age and ownership solution in M&A of Japanese firms, 2010-2019

物理的距離、文化的距離、政治的不確実性はクロスボーダーM&Aの阻害要因となるが、その影響度が買い手の所在国、企業規模、設立年数、持株比率によって、どう変わってくるかについて、検証した。2010年から2019年まで日本企業のoutbound M&Aをサンプルとして、条件付きロジット(McFadden's choice model)を用いる。検証の結果、第一に、文化的距離が日本企業のoutbound M&Aを阻害すると認められなかった。第二に、大企業は地理的距離・政治的不確実性に対する許容範囲が広く、社歴の長い企業は文化的距離に対する許容範囲が狭い。第三に、完全子会社化が物理的距離という阻害要因を軽減できると認められた。日本企業のクロスボーダーM&A戦略立案のメカニズムは先行研究で報告された結論より遥かに複雑であるとの示唆が得られた。

※時間はおおよその目安となりますので、早めの時間にご入室ください。


なお、今回登壇しませんが、優秀論文に選ばれたその他の方々は以下の通りです。

河合 祐二朗(中村ゼミ)
ネットワーク構造に基づくポートフォリオ最適化-- ヴァインコピュラアプローチ--

本稿ではClemente et al. [2019]が提案したクラスタリング係数を用いたポートフォリオ最適化に、周辺分布に左右非対称かつ裾の厚い誤差分布を考慮した一般化双曲型非対称t分布を取り入れたヴァインコピュラを用いると共に、ネットワークの構築に TMFG(Triangulated Maximally Filtered Graph)アルゴリズムを適用し、コピュラの有無やネットワーク構築法の違いがポートフォリオのパフォーマンスや特性に与える影響を勘案し、考察した。研究結果より、上下非対称な依存構造とデータ間の密な関係を考慮したネットワーク構造に基づくポートフォリオの構築により、銘柄間の上下非対称な依存構造や相互関連性を捕捉することが可能となり、ポートフォリオパフォーマンスとドローダウンが改善するとの示唆を得た。

道脇 祐介(伊藤ゼミ)
自発的開示が流動性と企業価値に与える影響:説明会データを用いた実証分析

 本研究の目的は、経営者が行う自発的な開示が流動性に与える影響、および流動性の増加を通じて企業価値に与える影響を検証することである。自発的な開示を事業説明会やESG説明会などいわゆる決算説明会以外の説明会開催と定義し、傾向スコアマッチング・DID推定を行った。説明会の開催前後で流動性が増加すること、投資家からの評判が高い場合および情報の非対称性が大きい場合、流動性の増加幅が大きくなること、流動性の増加が企業価値の向上に影響を与えることが分かった。企業の非財務情報は有価証券報告書等の文書により開示されているが、説明会において行われるアナリストとのディスカッション等により、追加的な情報開示が行われる可能性を示唆している。