2022年02月28日

セミナー告知 修了生向けイベント 活動報告

発表開始時間を記載しました[2022.3.23] 2021年度 修士論文(優秀論文)発表会のご案内

 金融戦略・経営財務(FS)プログラムを修了予定(2022年3月修了予定)の学生の代表者による「2021年度 修士論文(優秀論文)発表会」を開催いたします。当イベントは、学内関係者に限らず、学外の方でもご自由にご参加いただけます。本プログラムにご興味・ご関心のある方のご参加を歓迎しています。多くの方々のご参加を心よりお待ちしております。

【概要】


※終了時間を変更しました(2022.03.18)

日時:2022年3月23日(水) 18:00 - 20:25   

ツール :ZOOM会議など

参加申込:お申込みは終了しました

【タイムスケジュール(目安)】


※各論文発表の開始時間を記載しました(2022.03.18)

18:00  ご挨拶 本多俊毅 プログラムディレクター/教授 

<計量系>
18:00 三浦 真理子(宮川大介ゼミ)
 貸株市場を経由した日本銀行によるETF買入政策の効果

日本銀行による近年のETF買入れ政策については,需要要因(買入れ増加)に着目した株価インパクトの分析が大半を占めるが,こうした影響とは逆に,運用会社で積み上がるETFや個別株が貸株市場へ放出され, 供給要因(空売りの増加)として株価の形成に影響する可能性もある。本研究は,介入が貸株市場における 供給プレッシャーとして機能する可能性を明示的に考慮しつつ,ETF買入れ政策の効果を実証的に評価する 。分析の結果,介入を外生ショックとみなした自然実験手法(Natural Experiment)を用いた分析において,ETF買入れ政策が貸株市場の需給を緩和させ,空売り機会拡大により株価押下げに寄与することで株式市場を安定させる,stabilizerとしての役割も有することが確認された。

18:25 矢嶋 大貴(大橋和彦ゼミ)
 Inventory Effect on Correlations in International Wheat Futures Markets - Empirical Analysis Using a new Specification of DCCX Model

本研究では、三か国の小麦先物市場間の相関と在庫の関係を検証した。結果、各国の在庫量が多いときには 相関が強まることが示された。これは、輸入地における国際競争が強まることで相関が強まったものと考え られる。実証結果は、既存研究で示されているInventory Effect(在庫が少ない時にはボラティリティが上 昇)とも整合的であった。実証には、新しいSpecificationのDCCXモデル(Dynamic conditional correlation model with exogenous variables)を用いた。また、新しいDCCXモデルを用いることで、クロスヘッジ時のヘッジ効率が改善する可能性が示された。

18:59 姫野 知也(横内大介ゼミ)
 ニュースによる金融市場分析のためのトピックモデルの提案

本研究では,金融市場分析におけるニュースの特性を踏まえたトピックモデルを提案している.ファイナン スにおけるニュースは複数の銘柄に影響し,また,ラベルが付与されていることが多い.これを踏まえ,ト ピックモデルに,複数の教師データの対応付けを実現するランダム効果と,ラベルによる学習の補助構造を 導入した.この提案モデルと,日本のニュースと株式市場における取引金額データを用いた実証分析では, 業種や銘柄の違いによって,ニュースのトピックに対する投資家の反応が異なることを定量的に示した.さ らに,提案モデルによって学習したトピックから作成したスコアをもとに,期先の株価への影響分析を行い ,市況ニュースにファンダメンタルズに関する情報が含まれることを示唆する分析結果などを得た.

<財務系>
19:20 岡田 立子(野間幹晴ゼミ)
 プライム市場の上場基準と経営者の利益調整行動

本稿の目的は、東京証券取引所による市場改革が経営者の利益調整行動に与える影響を明らかにすることで ある。検証の結果、利益水準が類似している企業であっても、プライム市場への上場インセンティブを持つ 企業のみが利益調整を行う傾向にあることがわかった。利益ベンチマーク閾値近辺の市場第二部・マザーズ ・JASDAQの企業は、市場再編公表後に利益調整を行う傾向にある一方、既に市場第一部に上場している同程 度の利益水準にある企業においては、利益調整は観察されなかった。本稿の結果は、プライム市場に上場す ることを目的として一時的に利益を増加させた企業が、市場再編後に最上位市場を構成する可能性を示唆する。

19:39 堀場 崇宏(大橋和彦ゼミ) 
 プロジェクトファイナンスにおけるコベナンツの決定:太陽光発電所を対象とした二項モデルによる分析

本研究では太陽光発電所を対象としたプロジェクトファイナンスを対象として、投資家によるコベナンツの 治癒に着目し、コベナンツの設定等の融資条件が債権者価値、投資家価値にどのような影響を与えるのかを 二項モデルを使用したリアルオプションによる分析を行った。結果として、第一に治癒が可能な状況におい てはコベナンツの設定がある場合のほうが、コベナンツ設定がない場合よりも債権者価値が大きくなる場合 があること、第二にレバレッジの基準となるDSCRについては、一定以上の水準を超えると債権者価値が減少 すること、第三に治癒が可能な条件であることで、融資期間が短くなっても債権者価値が増加する場合があ ることが示された。最後にこれらの結果を活用することで投資家は自己の資金制約に合わせて適切なコベナ ンツ設定等の条件を選択して資金調達をすることができることを示した。

20:01 清水 仁志(大橋和彦ゼミ) 
 高齢化の企業利益への影響~産業別マクロ統計を用いた年齢別の生産性と賃金の推計

本稿は、日本の伝統的な雇用慣行である終身雇用、年功賃金が近年見直されつつある背景について、産業別のマクロデータを用い、年齢別の生産性と賃金、ならびに利益を推計することにより分析を行った。その結果、産業別のマクロデータを用いた本分析は、事業所や企業別のミクロデータを用いた先行研究同様、生産性が中年齢でピークとなる逆U字型の生産性カーブであることを確認し、同時に利益についても直接的に推計することで、労働者の高齢化により利益が押し下げられることを示した。また、上記に加えて、産業構造の複雑化などにより、現在にかけてより高年齢の労働者の生産性が低下していることが、さらに企業利益を押し下げる要因となっている可能性があることを示した。以上2点により、企業は従来の終身雇用、年功賃金を見直さざるを得ない状況である可能性があることを確認した。


なお、今回登壇しませんが、優秀論文に選ばれたその他の方々は以下の通りです。

玉川 哲也(伊藤彰敏ゼミ)
サステナビリティ経営が企業の投資能力と企業価値評価に与える効果に関する要因分析
The impact of corporate sustainability management on investment capacity and market value

サスティナビリティ経営には企業価値を向上させるという見方とGreenwashingの批判の両方が存在し,これを見極めることが社会的要請になっている。本研究では第一にGHG排出量が多いグループ、第二にGHG削減目標を公表したグループを処置群として夫々の対照群をPSマッチングによって割付けた後,資本制約と設備投資,市場評価への影響についてDID分析をおこなった。パリ協定を外生的ショックとする第一グループの分析ではステークホルダーとの関係やガバナンスを通して資本制約の低下と設備投資の増加が確認されたが,第二グループでは確認できなかった。一方,資本制約や設備投資の変化が無いにもかかわらず,第二グループでのみ一部の高R&D企業の市場評価が上昇しており,これはGreenwashingの批判が的外れではない可能性を示唆している。

中辻 仁志 (本多俊毅ゼミ)
3ファクターイールドカーブモデルを用いた将来金利の予測可能性

本研究では、Diebold and Li[2006]のDynamic Nelson-Siegelモデル、Christensen et al.[2011]のArbitrage-Free Nelson-Siegel(AFNS)モデル等の3ファクターイールドカーブモデルの有用性について検証する。これらのモデルが実際のイールドカーブにうまく当てはまるかどうかは、標本となるデータやサンプル期間に大きく依存する。ダイナミック・ファクター・モデルによる金利水準の予測は困難であるが、金利変化の予測は可能である。比較したモデルの中ではAFNSモデルの予測精度が悪かったが、これは金利ボラティリティの構造変化を捉えられていないことが原因で、モデル改善余地が大きく残されているといえる。モデルの検討では、あらゆるケースで有効で、かつ簡易的に構築できる、主成分モデルや代理変数モデルをベンチマークとして用いるのが適切である。

渡邉 裕也(中村信弘ゼミ)
オプション市場におけるインプライドスキューの変動要因:歪度リスクプレミアムとレバレッジ効果の役割

本研究では,テールリスク指標として機能するCBOE SKEWの変動要因を明らかにすることを目的に、ジャンプとレバレッジパラメータの時間依存性を勘案した確率ボラティリティモデルを用いてSKEWと市場ファクターの関係性を分析した。その結果、SKEWの変動はそこに含まれる歪度リスクプレミアムによって概ね説明されており、特に市場不安定期は株価のジャンプファクターが強く影響を与えることが分かった。一方、市場安定期はボラティリティがSKEW強い影響を与えており、分散リスクプレミアムと歪度リスクプレミアムはボラティリティを共通ファクターとしていることが示唆された。