修了生の活躍

FSの先生は「山登りの優秀なガイド」。知識の「点」が「面」として広がる喜び

アムンディ・ジャパン

運用本部 クオンツ&インデックス運用グループ グローバル・クオンツ運用部長

寺口 政行さん

2005年3月修了

FSで学ぼうと考えた理由は?

株式のクオンツ運用のファンドマネージャーを務める

現在はアムンディ・ジャパンという資産運用会社で、年金や機関投資家、個人投資家のお金を預かって運用しています。私のチームではクオンツ運用という、個別の企業や株式を選別するモデルを使った運用をしていて、私がそのファンドマネージャーを務めています。株式のファンドマネージャーといえば、企業訪問して社長に会ったり、個別企業のバランスシートを見たりアナリストに意見を聞きながら銘柄選択を行う場合が多いのですが、クオンツ運用はこれとは異なる、モデルを根幹とした運用手法です。

クオンツやデリバティブの世界を俯瞰して見るための知識

2003年、FSに入った当時はクオンツアナリストとして、クオンツ運用のモデル作りやデリバティブの評価、定量的なリスク管理などの仕事をしていました。頼れる専門家が周りにいなくなったこともあり、当時の私は、自分で教科書を読んだり論文を探したりして独学で勉強していました。業務に必要な知識はありましたが、知識が「点」や「線」でしかなく、クオンツやデリバティブの世界を俯瞰して見たり、今使っているテクニックは全体の中でどういう位置づけかを理解するところまで至っていませんでした。さらに上のレベルを目指すには、より高いところにいる方々から学んだ方がいいのではと思い、FSの門を叩きました。
例えば計量ファイナンスと一口に言ってもその内容は非常に広く、株式、債券の評価や信用リスク、デリバティブといったさまざまな切り口があります。FSには、それぞれの分野に高いレベルの知識と経験を備えた先生方がいて、その質と量が非常に優れているので、ぜひここで学びたいと思いました。
会社員が大学院でファイナンスを学ぶ意義は、仕事に生かせるノウハウを身に付けられること。FSにはアカデミクスと企業の実務の両方を経験している先生がいることも、私にとって魅力的でした。

FSで学んだこと、印象に残っていることは?

ポートフォリオ理論とデリバティブ理論の関わりを理解できた

teraguchi2.jpgFSでは多くのことを学びましたが、大きく分けると次の3つになります。ひとつはデータ分析の方法です。今株式市場で何が起きているのか、それぞれの企業にはどういった特徴があるのかを分析するテクニックを数多く学びました。
2つ目はポートフォリオ構築です。いかに効率よくポートフォリオ運用を行うかという技術や理論を学びました。
3つ目はデリバティブの知識です。教科書にも載っていないような複雑なデリバティブをどう評価すべきかという考え方や、金融機関がデリバティブを売ったあとに損をしないための投資行動などのスキルを教わりました。
ポートフォリオ構築の期待効用最大化という概念と、デリバティブにおけるオプションの価格付けなどの理論を、これまでは別々に勉強していました。FSで学んだことで、両者が非常に深く、密接に関わっていることを理解できました。「点」でしかなかった知識が「線」になり、「面」となって広がっていくのを実感して、「知る喜び」が満たされました。

FSで学んだことが、現在の業務にどう生かされているか?

プログラミングを通した様々な計算技術も学んだ

ファンドマネージャーの仕事とデリバティブの仕事は別のものではなく、それぞれ関連し合いながら、一方の概念やテクニックをもう片方に生かせるようになったのが、FSで学んだ大きなことのひとつです。クオンツアナリストをしていたときも、どんな形のモデルを作ればよりうまくリターンを上げられるかという調査・研究において、学んだことがそのまま生かされました。
プログラミングを使ってリスクの大きさ、妥当な価格水準などを計算する手法の知識も役立ちました。仕事で使う数学やプログラミングは会社に入ってから本格的に勉強したのですが、FSにはこれらを学べる授業もあって、実務に生かせるノウハウを体得しました。

FSで、学業以外で得られたものとは?

同業他社や、株式投資の多様なプレイヤーとの交流

同業他社で同じ仕事をしている人と親しくなるのは難しいものですが、FSの同級生としていっしょに苦労してきた同業者に対して、おたがいの仕事を理解できたのは大きな意義がありました。
また、株式投資について自分が直接関わる世界とは別の、企業財務やM&A、信用リスクなどに携わる人や、債券を扱う人たちと知り合えたのは私にとって財産です。今でも連絡を取っていて、ときには実際に会うこともあります。
ビジネスや学会だけで知り合う関係と、同じ学校で苦労をともにした関係とでは、つながりの濃さが全く違います。

業務や家庭との両立はどのように実現したか?

好きな分野なら打ち込める

宿題はたくさんあるし、勉強もたくさんしました。これに会社と家庭と、3つの社会で生きていく。もちろん苦労したことはありましたが、自分が好きな分野であれば打ち込めると思います。体力的にきつかったのは事実ですが、知れる喜びが強かったので、つまらないという気持ちは全くなく、非常に充実していました。
FSに通っていたときの生活は、平日は朝に会社へ行き、夕方にFSへ行って授業を受けて、そのあと夜11時頃まで自習室で勉強してから家に帰るというパターンでした。土日は午前中に買い物や子どもの世話をして、午後はFSの自習室にこもり、やはり夜まで勉強していました。

子どもが手のかかる時期でも、行けるなら行った方がいい

家庭では、FSに入って1年目の秋に第1子の子どもが産まれ、2年目に妻が第2子を身ごもるというたいへんな時期でしたが、私も限られた時間の中でできる限りの協力をしました。家では子育てについて不満が出ることもなく、学業をサポートしてくれました。
会社では、年次を重ねるにしたがって責任が増していきます。子どもが手のかからない年齢になるまで待つと、かなり先になります。もし今大学院へ行けるのなら行った方がいいと思います。早めにスキルを身に付ければ、修了後もいろいろな本や論文を読んだりしてさらに高いレベルへ早く到達できます。仕事の引き出しも多くなり、世界が大きく広がります。

FS金融戦略・経営財務コースを志す方にメッセージをお願いします。

高いレベルの仕事ができるノウハウが確実に身に付く

勉強は山登りにたとえられます。ひとりでもある程度登ることはできますが、正しい道が分からない中で、どの道が効率的かは判断できません。途中で行き止まりになったり、迷子になるリスクもあります。
FSの先生は、山を熟知した非常に優秀なガイドです。効率よく山頂に登れる道を教えてくれたり、自力で登りきるための適切な装備を授けてくれたりします。今どの論文を読むべきか、どのような問題を解くべきかを、その人の習熟度に合わせて適切にアドバイスしてくれます。
FSで学んでスキルを高めれば、会社に戻ったときにより高いレベルの仕事ができるノウハウが確実に身に付きます。志のある人はぜひICSで勉強してほしいと思います。

※本記事の内容、肩書き等は2014年10月当時のものです。

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