修了生の活躍

FSで学んだ知識はファイナンスの「共通言語」

トヨタアストラファイナンシャルサービス株式会社

取締役兼最高財務責任者(CFO)兼最高リスク管理責任者(CRO)

樋口 哲央さん

2006年3月修了

FSで学ぼうと考えた理由は?

デリバティブ取引と企業価値ならびにリスクの関連は?

1995年に銀行に入行し、主にディーリングルームでデリバティブ業務に従事していました。アジア通貨危機、ユーロ統合といった時代の節目を経験しました。
2004年のFS入学当時は、厳しい経営環境を前に、日本の銀行が揺れている時代でした。私が勤務していた銀行も例外ではなく、1995年当時と比べるべくもない状況下、「経営とは?」との思いが強くなっていた時期でした。
また、2000年から2004年にかけては、取引先企業とのデリバティブ取引件数が飛躍的に伸びた時期でもありました。デリバティブの活用はリスクヘッジが第一の目的であり、企業価値向上にもつながると考えられていますが、果たして企業がどの程度意図した通りリスクをヘッジできているのか、あるいは企業価値向上に結びついているのか、きちんと検証したいと日々の業務を通じて考えるようになりました。
当時、業務にまみれ自分自身では問題意識を正しい方法で整理できず、もどかしさを感じており、経営と金融を統合的に学ぶことができ、且つ、学生の問題意識に応じ、複数の先生方に師事できるFSは魅力的に映りました。
加えて、私の修士論文「デリバティブ取引と企業価値ならびにリスクの関連」の良き指導者である野間幹晴先生がFSで教鞭をとられており、問題意識を真正面から受け止めていただいたことも大きな理由です。

FSで学んだこと、印象に残っていることは?

実務面の問題意識を共有できる先生方

FSでは、体系的かつ徹底的な計量的分析能力を鍛えられ、複雑な経営課題を前に揺らぐことがないよう準備ができました。一方、講義を通じて多くの経営者の熱い思いに触れ、実務における問題意識を一層掘り下げることができました。
FSなので講義のレベルが高いのは当たり前なのですが、特に素晴らしいと思ったのは、実務面の問題意識を共有できる先生方ばかりだったこと。仕事と学問をしっかり橋渡しして下さいました。先生方のコミュニケーション能力は極めて高く、節目節目で助けていただきました。
また、「海外で経営者として活躍するには、勉強だけできてもダメ。美術、シェイクスピア、ワイン等の教養を身に付けていることも大切」との三浦良造先生のアドバイスは肝に銘じております。
最も印象に残る思い出は、2年間かけて書き上げた修士論文です。担当教官の野間先生の力を借り、試行錯誤しながら取り組みました。論文を評価していただいた時は感無量でした。

FSで学んだことが、現在の業務にどう生かされているか?

見識が人を動かす

higuchi2.jpgFS卒業を契機に、2006年にトヨタファイナンシャルサービスに転職しました。トヨタファイナンシャルサービスとは、トヨタ自動車における自動車ローンやリースを中心とした自動車販売金融サービスを展開する金融会社の統括会社です。現在はトヨタアストラファイナンシャルサービス(インドネシア)に出向し、最高財務責任者と最高リスク管理責任者としてマネジメントの一翼を担っています。

インドネシアの年間新車販売台数は100万台を超え、ASEANでトップ、世界でも有数の市場規模を誇ります。インドネシアでのトヨタの合弁相手は、アストラインターナショナルという当地NO.1の財閥です。私の出向している会社の社員数は1,000名弱にすぎませんが、MBAホルダーも少なからず在籍しており、私自身が部下から「品定め」されています。マネジメントという立場であっても、正しい知識や実務に裏付けられた見識がなければ、人を動かすことはできないと日々痛感しています。

データ分析やコーポレートファイナンスの知見が経営戦略策定に役立つ

FSで学んだことで現在の業務に役に立っているのは、データ分析の正しい方法(正しい数字の扱い方)と、それを掘り下げる力(解釈する力)です。また、リスクの計測とハードルレート、資本構成、配当政策、バリュエーションについてはマネジメントとして片時も忘れることはありません。経営戦略策定に当たり、FSで学んだことを実践できる幸せを感じております。
海外で会社を経営するには、コミュニケーション能力や相手の立場を慮る気持ちに加え、拠って立つ見識は必要と考えます。

業務や家庭との両立はどのように実現したか?

普段からの信頼関係を大切にする

周囲の理解に尽きます。
会社で上司・同僚からの理解を得るには普段からの信頼関係が大事です。試験期間を除き、時にはFSの講義より業務を優先するという割り切りも必要でしょう。
会社に加え、家族の理解も大切かと思います。FSを志す方はぜひ、「2年間で必ず卒業」とコミットメントし、その後のキャリアのロードマップを示すなどして「家庭内世論」をコントロールしてください。足早のご卒業を目指してください。

FSで、学業以外で得られたものとは?

「盗めるところは盗もうと思っていた」

かけがえのない友人です。
私の入学同期は一騎当千の猛者ばかりで、いつもモチベートされていました。彼らから盗めるところは盗もうといつも思っていました。現在もその気持ちには変わりはありません。
また、数学の宿題でほとほと困り、毎日朝4時までメールでお互い励ましあいながら勉強した友人とは強い絆で結びついています。

海外で活躍したいという人にメッセージをお願いします。

イスラム金融の大学院を修了、学び続ける姿勢

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FSで身につけた知識はファイナンスの世界では最先端の「共通言語」です。地域、国によって商慣行は異なりますが、FSで学んだファイナンスの知識と技術は真理といえるのではないでしょうか。困ったとき、どうしてよいかわからないときは、FSで学んだことへ立ち返ってください。
私自身、日々挑戦の連続です。インドネシアは世界最大のイスラム国家であり、そのポテンシャルは計り知れません。トヨタアストラファイナンシャルサービスでは、2013年からイスラム金融ビジネスを開始しています。マネジメントとして、しっかりとイスラム金融の研究を行いたく、週末を利用し、国境を超え、昨年初からマレーシアのInternational Centre for Education in Islamic Finance(通称:INCEIF)というイスラム金融の大学院(修士課程)に通学しています。その研究も順調に消化し、約1年半で卒業の要件に達しました。卒業式はこの10月です。イスラム金融のアカデミックと実務に精通し、いつの日かインドネシアそして日本におけるイスラム金融発展の一端を担いたいと考えています。
海外での活躍を希望されているみなさんには、挑戦し続ける気持ちを胸に、ぜひFSでファイナンスの「共通言語」を学んでいただきたいと思います。

※本記事の内容、肩書き等は2014年10月当時のものです。

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