修了生の活躍

IPOを実現したCFO。 大学院で培ったのは資金の出し手の目線

株式会社 はてな

取締役 CFO

小林直樹さん

2011年3月修了

れまでのキャリアは?

「多様な業種、一貫した職種」

現在、株式会社はてな取締役CFOとして、財務戦略やIRの責任者を務めております。2012年4月に当社に参画してからは、コーポレート部門の立ち上げと上場準備チームの立ち上げを同時に行い、両方の責任者を務めました。そして、2016年2月には東証マザーズ市場に株式を上場することが出来ました。

株式会社はてなに参画する前は、東証1部の不動産デベロッパー、大手監査法人系財務コンサルティング会社といった大手企業等での財務マン・財務系コンサルタントを経て、その後、創薬系バイオベンチャー、ターンアラウンド企業そしてネットベンチャーのはてな、といったベンチャー企業でのCFOに従事しました。私自身ではこのキャリアを「多様な業種、一貫した職種」と称しております。

FSで学ぼうと考えた理由は?

「資金の出し手のロジックを理解して共通言語で対話し、信頼関係を構築すること」がベンチャー企業の経営に役立つのではないかとの仮説から

2-253x300.jpg多様な業種を経験しましたが、職種に関しては一貫して財務・ファイナンスに長く深く従事していましたので、企業側の責任者として資金の出し手である銀行や投資家といった金融側の方々と対話する機会も一貫して多かったわけです。特に人数の少ないベンチャー企業では、自分1人でその役割を最大限に果たさないと、財務に関することですから会社の経営にも直接的に大きな影響が生じてしまいます。会社の財務責任者として孤軍奮闘することは当然として、少なくともファイナンスに関する情報格差は低減しておかないと会社経営にも大きく影響するというリスクを痛感していました。

したがって、知識欲のような個人的な理由に加えて、財務責任者として会社の存続や成長のために、金融側の方々と共通言語で対話し、共通のファイナンスロジックを理解の上で信頼関係を構築するため、つまり仕事に直結する礎を強化することが大きな理由でした。資金の出し手のロジックを理解して、同じ目線をもちながら、しかしながら自分は企業の財務責任者の立場で的確に金融側の方々と対話していく素養を身に着けることが、ベンチャー企業の経営にも大いに役立つのではないかとの仮説を持っていたわけです。

一橋大学大学院を選んだ理由

明日から使える生きた知識とファイナンス理論をロジカルに学べる贅沢な環境

実務ご出身の先生と理論を極めた先生、双方のご専門の先生が豊富かつバランスが良いと感じた点です。M&A実務の世界で著名な先生方が教鞭を取られることで明日からでも使える生きた知識が吸収でき、一方でファイナンス理論をロジカルに学ぶことで投資家の行動基準が体系的に整理できる。

ファイナンス実務を企業で実践する者にとって、このような場で学べることは、信じられないくらい贅沢な環境でした。当時の自分はFSで学ぶことは必然であると確信しており、他を探してもこのような贅沢な環境を提供する大学院は見当たりませんでした。

大学院で学ぶことで、将来の目標等、自分の中に変化はありましたか?

情報知や引き出しの多さが自信につながり、CFOの職務への思いを強める

前述の通り、資金の出し手のロジックを理解することが、ベンチャー企業の経営にも大いに役立つのではないかとの仮説を持ってFSで学んだわけですが、その仮説は間違っていなかったと感じています。

修了1年後に現在の会社に参画して、株式上場準備チームの立ち上げから上場準備実務そして株式上場の実現まで約4年をかけて、プライベートカンパニーからパブリックカンパニーになる全てを経験し、責任者として様々なステークホルダーや専門家と対話を行ってきました。上場株式という金融商品やその動きを通じて見えてくる投資家や企業の行動に対して、極めて多様な視点を提供してくれたFSでの学びは、パブリックカンパニーになるにあたっての貴重な情報知あるいは引き出しの多さを得ることに繋がりました。

投資家や株主、証券会社や株式市場といったパブリックカンパニーになる過程で、避けては通れない対話の相手先と向き合った場合でも、今まで以上に自信をもって臨めるような変化があったと感じています。むしろ理解が進んだことで対話することが一層楽しくなり、CFOの職務やファイナンスといった業務に正面から向き合っていきたいという思いが更に強くなったのではないでしょうか。

学業以外で得られたものとは?

外部関係者との信頼関係を構築するのに役立った学友の存在

1-200x300.jpg財務や資金調達の仕事に従事していて感じることは、当然自分が所属する企業のために資金調達をしますが、調達したからには、企業の外にいる投資家・金融機関・株式市場・専門家等(総称して外部関係者)からの期待や信頼に応えていくこと、つまり外部関係者との信頼関係を強く意識することを求められる仕事であるという事です。

企業の財務責任者は、企業の中だけでその役割は完結せず、企業の外にいる外部関係者との信頼関係が成立してはじめて完結すると考えています。企業の中に軸足は置いているが、体は外部関係者と向き合っているかのようなイメージです。FSでの学びが情報知としてその信頼関係を構築することに役立っていることは前述の通りですが、外部関係者の機関に属する学友も多いのがICSの特徴ですから、彼らに出会えて、彼らの志向や行動パターン等を知ることができたことも信頼関係を構築する上では直接的または間接的に実は役立っています。ベンチャー企業のCFOとして孤軍奮闘を余儀なくされてきた時期もありますが、FSでの学びや経験を通じて情報格差が低減され、外部関係者との信頼関係を構築する手がかりを沢山得ることができたことは、リスクは高くても職責にしっかり向き合い、そしてそれを楽しむことにも役立っており、自分にとってはかけがえのない財産になっています。

これからMBAを目指す方にアドバイスをお願いします。

 私自身はベンチャー企業のCFOという立場ですので、金融や財務の視点で経営を理解するアプローチともいえる一橋大学大学院FSのMBAは前述の通り極めて有益でした。仕事が経営そのものでしたので、経営実務に役立てるという点も重視し、金融戦略・経営財務プログラムのカリキュラムに加えて、ビジネスロー専攻の科目を上限まで取得して、自分が求めるカリキュラムを自発的に組むように心がけました。自分の興味、仕事への役立ちなど、自分が重視する学びを得るために、プログラム外の履修(注1)などを含めて自分流にアレンジしていくことも必要だと思います。修了生OB・OGの生の声を聞いたり、学校側の説明会などを利用して、自分が学びたいことが本当に学べる仕組みになっているのか等を確認されると良いでしょう。



※本記事の内容、肩書き等は2017年9月当時のものです。
注1:ビジネスロー専攻プログラムの講座は8単位まで受講可能

    
2017年9月8日に、「IPO体験談とベンチャーCFOの役割」という内容でご講演いただきました。   
<ファイナンスクラブの様子>
   http://www.fs.ics.hit-u.ac.jp/info/info_post/finance_club9/

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