修了生の活躍
日本経済新聞社 グローバル事務局 Nikkei Asian Review グループ
足立(鈴木)真理さん
2014年3月修了
大学を卒業して日本経済新聞社に入社し、経済を中心に記者をやってきました。その後、グループ会社のテレビ東京に出向し、主に金融や経済の番組を担当していました。FSに入学する直前の4年半はニューヨークの特派員として、アメリカの金融業界を見てきました。
帰国後は日経新聞の本社に戻り、現在は事業系の部署で英文媒体のマーケティングなどを担当しています。ちょうどFSに入った2012年春がジャーナリストから現在の部署に移ったタイミングと重なり、自分にとって新しい事業だったので大変な思いをしたことを覚えています。
記者時代に、取材でいろいろな人に話を聞く機会がありましたが、経済学の数理的な裏付けまでは検証できないまま、自分のそれまでの知識を元に記事を書いていました。そんな状況が続く中で、もっと経済を根本的な理論から知りたい、企業のM&Aのデューデリや仕組みを深く知りたいという思いが高まり、経済学について改めてきちんと勉強したいと思ったのがFSを目指したきっかけでした。経済学を体系的に学べば、取材にせよそのアウトプットにせよ、もっと深みを出せるのではと考えました。アメリカにいたときは、海外の学者と議論をする際に、自分の中にもっと自信を持てるものがほしいとずっと感じていました。
リーマン・ショックが起きたときにもアメリカにいました。これまでの経済理論では説明が難しい100年に一度と言われる様な大きな金融危機で、ニューヨークのみならず、世界の金融業界の人たちもみんな動揺していました。ただ、今起きていることが本当に従来の理論で表せないほどの大変なことかどうかは、理論を勉強しないと否定も肯定もできません。あの金融危機を震源地で体感したことも、経済学への興味を強めました。
ほかの大学院も検討したのですが、学費が安いことに加え、会社からのアクセスが良いことでFSを選びました。
実は職場の誰にも相談しないで受験しました。さすがに直属の同僚には迷惑がかかるだろうと思い、合格したあとに話をしたのですが、みんなすごく好意的で、応援してくれると言ってくれました。
授業は6時20分から始まるので、どうしても会社を途中で抜ける形になります。同僚も融通を利かせてくれて、会議時間もアレンジしてくれました。どうしても抜けられないときは、1限目のあとに会社に戻って8時からミーティングということもありましたが、周囲の理解があり、無事に乗り越えることができました。
「こんなに大変だと思わなかった」というのが正直なところです。平日は図書館や学生室で朝3時くらいまで勉強したり、会社の昼休みも活用していました。そんな毎日を続けるうちに、意外と日々の生活の中に空き時間があることに気づいて、時間を有効に使えるようになりました。
苦労を乗り越えたのは同級生の支えがあったからです。土曜日や日曜日は必ず誰かと一緒に勉強していました。みんな必ず2年で修了するんだと燃えていて、その姿がとても励みになりました。先生方からも「やれば必ずできる」と応援していただきました。
特に、数学は泣きながら勉強していました。先生の仰っていることが理解できない、テキストを見直しても分からない。そんなときは同級生に頼って、この式はなぜこうなるのか、納得が行くまで話し合いました。
これだけ苦労したからこそ、数学で「A」の評価を取ったときは本当にうれしかった。やり続ければやっただけ成果が出ることを実感できました。
修士論文は、今取り組んでいる仕事につながるように、広告と企業価値の関係をテーマに選びました。論文を書くにあたって、計量経済学の基礎から数式を組み立てるところまで、多くの先生に指導していただきました。特にゼミの専任だった伊藤先生にはお世話になりました。
40歳代になってなぜ勉強するのかと言われたこともありましたが、自分の好奇心や「知りたい」という気持ちは年齢とは関係ありません。会社では年次が上がって、人生のカウントダウンが始まるような感覚ですが、大学院では逆に人生がカウントアップしていく、新しいことが始まる、自分の可能性が広がっていくことが感じられます。FSでは、自分の未来につながる、次のステップへの希望を得られました。
今の事業に直接活用できる技能ではないかもしれませんが、いろいろなことを理論的に考えたり、計量的にとらえるベースができたので、それがあらゆる場面で間接的に生かされていると思います。
仕事においては、FSで得た仲間やネットワークが十分に生かされています。例えばFSのプロモーション活動に日経新聞がスポンサーとして参加したり、そのおかげで日経が主催するMBA講座では他のコースの先生に協力していただくなど、会社としてビジネスの幅も広がりました。
同級生は私を含めて40人のうち8人が女性でした。出産を控えた方もおり、男性以上にがんばらなければならず、皆とても大変だったと思います。
大学院の良いところは、性別や年齢は一切関係ないところです。会社だとどうしても年次などに縛られてしまいますが、ここではみんな平等です。会社や家庭とは違って、年齢を意識しなくてもいい時間はとても有意義なものでした。
私以外にも事業会社で働く人がいました。今の仕事が金融と直接関係なくても、FSで勉強することで、これまでの自分とは違うジャンルで活躍できる可能性が広がります。この先、どこに何が落ちているかは分かりません。そうしたチャンスを拾うための素晴らしいきっかけになると思います。
特に、ジャーナリストこそ大学院のような場に来るべきだと思います。金融に限らず、いろいろなジャンルの学問を深く習得することで、知識の幅が広がり、取材や記事を書くのに必ず役立ちます。
とはいえFSの2年間はとても大変です。ここに来る人は覚悟を決めなければいけません。ただ、努力をして得られるものはそれ以上の価値があります。人生の可能性を広げたいという方は、ぜひ覚悟を決めて挑戦してほしいと思います。
※本記事の内容、肩書き等は2014年10月当時のものです。
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