修了生の活躍

勉強は「自分への投資」 知識の探求と自らの可能性を拓くため博士課程に挑戦

丸三証券

調査部 経済調査部長 

安達 誠司さん

2014年3月修了

FSで学ぼうと考えた理由は?

海外の顧客の多くはMBAを取得

大学生の頃は経済学部の経営学科で学んでいましたが、当時は金融理論にさほど興味はありませんでした。就職がバブル期と重なっていて、株価がものすごい勢いで上がっていたので、会社の業績を分析できるようになりたいと、証券業界に興味を持ちました。
最初に就職したのは国内系の証券会社で、リサーチ部門に配属されました。私が担当したのはマクロ経済のリサーチ。大学の専攻とは異なる分野だったので焦りましたが、上司にOJTで教えてもらいながら独学で仕事を学びました。体系づけられた理論を学ぶわけではなく、日々勉強をしながら仕事に取り組む毎日でした。
大学院で学ぼうと思った直接のきっかけは、最初の転職で外資系の証券会社に入ったとき、顧客である外国人の方の多くがMBA、あるいは博士課程を修了していたことです。出張でロンドンやニューヨークへ行ったとき、「なぜMBAを取っていないのか」などとよく言われました。

「マクロ経済とファイナンスの橋渡し」を学びたい

業務内容もマクロ経済の見通しを伝えるだけにとどまらず、その見通しを踏まえて株価や為替、金利がどうなるかという意見を求められることが増えてきました。そうした要望に応えていくためには、ファイナンス理論を体系的に学ぶ必要があると感じました。マクロ経済とファイナンスの間の橋渡しとして、マクロファイナンスというモデルについて学ぼうと考えました。
計量ファイナンスに強く、なおかつ社会人が通える大学を探したとき、先生のレベルが最も高いと思ったのがFSでした。
FS金融戦略・経営財務プログラムのMBAに入学したのは2012年4月。2014年3月に修了したあと、現在は博士課程で引き続きファイナンス理論を学んでいます。

会社の協力や、業務との両立はどのように実現したか?

授業を入れない曜日を設け、週末は休養に充てる

adachi1.jpg勤め先の外資系証券会社では社員の成績は点数制になっていて、大学院へ行こうが何をしようが社内の業務で一定の点数が取れればよかったので、その意味でFSへ通うことに支障はありませんでした。日々の業務のスケジュールもきっちり決まっており、突然新たな業務を振られるようなこともありません。欧州との電話会議がある場合も、時差があるので大学院の授業が終わった夜10時過ぎからと好都合でした。
その後転職した今の会社でも、私が大学院で学ぶことに対して前向きにとらえてくれています。
仕事と学業を無理なく両立できるよう、授業は週4~5コマ程度にとどめ、授業を入れない曜日を1日設けるようにしました。
勉強時間は平日の早朝、昼休み、夜にだいたい1時間ずつ、1日で3時間ほど勉強していました。夜間の勉強ではFSの図書館をよく利用していました。また、土日は基本的に休むようにしました。

FSで学んで苦労したこと、印象に残っていることは?

細やかな指導とコミュニケーション

最初に感じたことは、指導が非常にていねいだということ。入学前のイメージでは、例えば課題を提出したら○か×をつけて返ってくるだけと思っていましたが、実際は間違った箇所について詳細なコメントを書いて返していただける。ゼミの担当教員ではない関わりの少ない先生からも声をかけていただけるなど、先生と学生のコミュニケーションが密なところもICSの良さだと思います。

指導教員以外の教員も修論に尽力

修士論文で苦労したことも思い出です。ほかの学生は1年次に科目を集中して履修することが多いのですが、私は年齢が高いこともあり、あまり集中して科目を取る体力がなく、2年次の春まで分散して履修しました。そのために修論のスタートが遅れることになりました。
実際に10月の時点でもほとんど手つかずで、私も焦っていましたし、先生にもかなり心配されました。文章を書くことは仕事上慣れていたのですが、その前の段階として、テーマを模索するのに時間がかかりました。
修論のテーマが株式投資のモメンタム(慣性)戦略に関することに決まったあとも、書いたプログラムがうまく走らず苦労を重ねました。私ひとりでは変な方向に突っ走ってしまうところがあり、先生にはその都度適切にアドバイスをいただき、そのおかげで方向性をうまく修正できました。12月の中間発表では、指導教員以外の先生にも発表を真剣に聞いていただきました。

FSで学んだことが、現在の業務にどう生かされているか?

投資信託の販売にもデリバティブなどの知識が必要

私の会社では、個人に向けた投資信託の販売が主要なビジネスのひとつで、どのように投資信託を選ぶかが重要となります。最近の投資信託は商品性が複雑なものが多く、その仕組みとリスク、リターンや手数料が適切かどうか、今の市場環境において顧客に勧められるかどうかを調べています。
昔であれば、外国投信ならどの国がいいか、今は日本株投信を買うべきかなど、単純な市場分析だけでよかった。もちろん今もマクロ経済のアプローチが重要なのは変わりませんが、今は販売会社の人間も複雑なデリバティブの仕組みなどを理解する必要があります。そのような面において、FSで学んだことは実務で役に立っています。

博士課程に進んだ理由とは?

修士論文を通じて、博士でも学べる自信を得る

かつて務めていた会社で外国人のお客さんが、お酒の席で「バブル経済はどのように生成されるのか」という話をうれしそうに話していました。その話が非常に興味深くて、聞くとその外国人は博士号を取得していた。より深い専門知識が得られたらどんなにおもしろいだろう、どれだけ可能性が広がるのだろうと思い、大学院に入るときはその先の博士課程まで視野に入れていました。
実際に修士課程を学んでいるときは、修士でも十分レベルが高いのに、博士課程になるとより高度な内容についていけないのではないかという不安がありました。しかし、修士論文がほぼ完成した段階で、さらに研鑽を積みたいという思いが強まり、博士課程に進学させていただきました。

FS金融戦略・経営財務プログラムを志す方にメッセージをお願いします。

一番リターンが高いのは自分への投資

社会人になると、きちんと勉強できる機会はなかなか作れません。毎日仕事に流されて一日が過ぎ去ってしまう。そんなマンネリを打開するのは自分ひとりでは難しい。何らかの「場」が必要だと思います。
FSは非常に素晴らしい「場」だと思います。FSの修士課程では私はほぼ最年長で、ほかの学生とは20くらい年が離れていますが、同じ学生だから普通に会話できます。会社でこれだけ年齢が違えば立場も大きく違うので、なかなか親しく話すことはできません。若い人と遠慮なく話すのは刺激的で、とても楽しい時間でした。
金融に携わっていると、株式投資で自分だけいかに儲けるかということを考えてしまいがちです。でも、最初に入った会社の上司は私に、「一番リターンが高い投資は、自分への投資だ」と言いました。私もその通りだと思います。
FSで学ぼうと思っている人は、なるべく早い段階で学んだ方が、将来の展望がより大きく開けるので、ぜひ思い切って挑戦してほしいと思います。

※本記事の内容、肩書き等は2014年10月当時のものです。