修了生の活躍

大学院で得られた自信と、「10年後の自分から見たら、今の自分はめちゃくちゃ可能性がある」という佐山先生の言葉を胸に起業

アークエルテクノロジーズ株式会社

代表取締役CEO

宮脇良二 氏

2018年3月修了

起業した会社について教えてください。

デジタルイノベーションで脱炭素化社会を実現する

大学院在学中に起業をすることを決意し、卒業した年の8月に福岡でアークエルテクノロジーズ㈱を起業しました。
「デジタルイノベーションで脱炭素化社会を実現する」をミッションとしており、事業は大きく分けて2つ、デジタルを使ってクリーンエネルギーの有効活用を進めるアークエルエナジーと、脱炭素を進める企業様のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するアークエルデジタルになります。
アークエルエナジーでは経産省の実証事業に採択され、EVと電力の卸市場連動型プラン(ダイナミックプライシング)を連動させたサービスを実証中です。
アークエルデジタルでは、地域のエネルギーを担う地方の都市ガス会社や、工場の脱炭素化を目指す自動車会社向けにDXの推進を支援しています。2020年7月には中小の都市ガス会社のDXを共同推進するGDN(ガスデジタルネクスト)を立ち上げ、都市ガス会社5社の参加の元、リモートワーク環境の整備やデジタル人材育成活動、3電池(太陽光、エネファーム、蓄電池)の最適利用に向けたアルゴリズム開発などを進めています。

これまでのキャリアは?

コンサルティングを20年、エネルギー業界向けのTOPに

新卒から20年間、コンサルティング大手のアクセンチュアに所属していました。金融戦略・経営財務プログラム(FS)在学時はアクセンチュア東京事務所の公益事業部門統括マネジングディレクターとして主に国内の大手エネルギー会社向けのサービスの責任者をしていました。

東京在住から一転、なぜ福岡で起業されたのですか

スタートは、環境、制度、モチベーションが交わった場で

起業の場所としては東京か福岡のどちらかで迷っていました。

福岡はアクセンチュア時代にプロジェクトで2年ほど移住しており、クライアントとの関係に加え、福岡の幹部育成研修機関で2011年から教えていた関係で、福岡の様々な企業の中堅幹部とのリレーションがあり、起業後のビジネス展開の不安が少ない地域として考えていました。特に九州の方達は、懐に入るととことん面倒をみてくださるので、飲みニケーションの好きな私にはとても適した土地です。miyawaki3.jpg

また、福岡市は数年前からスタートアップに力を入れていて、様々な支援制度があるのも魅力的でした。創業支援の制度融資が東京よりも充実していたことに加え、福岡市が運営するスタートアップ施設は築90年ほどの趣のある小学校跡で、教室の黒板もそのままです。20年のコンサルキャリアを経て、また1から出直す私にとって、黒板のある小学校で、起業家1年生を始めたいという気持ちになりました。

話は戻りますが、金融戦略・経営財務プログラムに参加した理由やきっかけは何だったのでしょうか

今後のキャリアのためにマスターを取得しておきたい

アクセンチュアで更に高いポジションを目指すにせよ、起業するにせよ今後のキャリアのためにマスターを取得しておきたいと思ったことが大学院を目指した理由でした。
しかしながら、当時の責任や、そのままアクセンチュアでのキャリアを継続するケースを考えると海外への留学は難しいと判断し、国内の大学に行く方向にしました。
長いコンサル経験や、入学前に民間のビジネススクールで教えていたこともあり、普通のMBAでは得ることが少ないと感じていました。そうした中で、FSは普通のMBAとは違い、金融と経営財務中心のカリキュラムで、新しいスキルが獲得できると感じ受験を決意しました。そして、国内トップのファイナンスプログラムということが最終的に一橋を志望した理由です。

私が入学した2016年4月1日は、電力小売の全面自由化初日であり、日本のエネルギー産業の構造が大きく変化するタイミングと同時に、私個人も新しい挑戦のスタートを切ったと当時は感じていました。

学んだ内容や印象に残っている事はなんですか

先生方が、純粋に理論を叩き込んでくださった。苦労して身に付けたものは必ず血肉になる

授業について行くのに精一杯でした。いや、ついていけなかった授業も数多く、数学の家庭教師をつけてなんとか乗り切りました。特に基礎科目の「ファイナンス理論の基礎」「ファイナンス理論」「金融データ分析の基礎」は、とても懸命に勉強して乗り切った事を覚えています。FSには偉ぶる先生がおらず、純粋に理論を叩き込んでくださった事が印象的です。
また、修論執筆に向けた勉強の中心はゼミです。2年間大橋ゼミに所属し、修論は電力卸取引所の価格変動について時系列分析に取り組みました。電力卸取引所の分析は私の会社運営の中でも最も重要な業務に位置付けられているものになっており、FSで集中して市場の動きを見た事がとても役に立っています。とはいいつつ、時系列分析の手法を理解するのに相当苦労しました。テキストと本を何度読んでも理解できず、最後は大橋先生に丁寧に解説いただき、なんとか前に進んだという感じでした。ただ、その時の経験が今に活きていると思うと、苦労してよかったなと考えています。
また、大橋ゼミではゼミの仲間達にも恵まれ、卒業後も継続して交流しています。日本を代表する金融機関のメンバー達でしたが、みんな素直で優秀、そして何よりも私に優しかったです 笑。テストや修論の時に本当に頼りになる仲間でした。加えて、大橋ゼミのOBにエネルギー業界の第一線で活躍されている方達も多く、様々なことを相談できるネットワークを手に入れたことも大きな財産です。

業務多忙のなか、学生生活はいかがでしたか

同級生は年齢も職位も不問、勉強を教えあったり飲みに行ったりフラットな関係性

時間のやりくりですが、M1の前期(4月~7月)は有給休暇を使い、毎週木曜日に休暇をとり、土日と合わせて勉強に当てました。成果主義の会社ですので、お客様やメンバーに迷惑をかけず、かつ結果を残していれば誰も何も言いません。出張も多かったので、スケジュール調整が大変で秘書には迷惑をかけましたが、仕事で支障をきたすことはなかったと思います。当時の秘書には本当に感謝です。土曜日の午前中は数学の家庭教師をつけ、わからない箇所を解説してもらい、なんとかキャッチアップしました。

また、同期の中では年齢は高い方でしたが、コンサル時代に金融業界を担当した経験もなかったため、金融業界の多い仲間逹が新鮮でしたね。若くて頭のいいのがいっぱいだなと。アクセンチュアという会社は年功序列ではなく、実力主義で、年齢については気にならないカルチャーで育ってきましたので、特に年齢は気になりませんでした。同期の若い子逹が無償で懇切丁寧に勉強を教えてくれるので、本当に助かりました。感謝しかありません。また、金融業界以外からきている同級生も少なからずいたのですが、そういうメンバーは個性的でしたね。よく飲みにいきました。

在学中の、勉強以外の思い出はありますか

佐山先生の影響で、フルマラソンやゴルフにも打ち込む

miyawaki4.jpg佐山先生の影響を受け、在学中に同級生達と初めてフルマラソンに挑戦しました。当時はまだ校舎の1階にロッカールームがあり、シャワーを浴びることができたので、授業前によく皇居の周りを走ったことを思い出します。

また、よく同級生達とゴルフも行きました。佐山杯(※)には全て参加し、M2の春に優勝することができました!

※佐山杯は春と秋の年2回、佐山先生と佐山ゼミの現役・OB、教職員で開催するコンペです。毎回20名前後のメンバーが参加し、ハンディ戦で競い合います。OBの皆さんと懇親する場としてとてもいい会です。

大学院で学ぶことで、将来の目標等、自分の中に変化はありましたか

ハードな大学院生活をやりきった自信と、佐山先生の言葉を胸に起業

miyawaki5.jpg結果的にFSを卒業すると同時に起業するという道を選びました。入学前はそこまで強く起業を意識していたわけではありませんが、FSで得られた自信と、佐山先生の「10年後の自分から見たら、今の自分はめちゃくちゃ可能性がある」「10年後に今を振り返ったら絶対に"あのときやっておけばよかった"と思うはずだ」という話に強く影響を受けました。たまたまですが、佐山先生が最初にファンドを立ち上げたのと同じ歳に起業することになりました。

起業直後にはスタンフォード大学に客員研究員として1年間留学し、シリコンバレーのクリーンテック企業のリサーチや現地のVCやスタートアップとのネットワーク構築を行いました。

大学院で学んだことは、今、どのような形で役に立っていると感じますか

当時必死で勉強した内容、同級生やゼミのネットワーク、そのすべてをフル活用

まず、やりきる事が出来たという自信が今の私を支えていると感じています。
また、基礎科目「会計・バリュエーションの基礎」と専門科目「アントレプレナー・ファイナンス」は起業に向けた必要知識の獲得に役立ちました。

miyawaki7.jpg授業で学んだ内容については会社でフル活用です!我々の事業のコアの1つは金融データ分析になり、データサイエンス、時系列分析、金融リスク計量、ファイナンス理論等々、当時必死で勉強した事がとても活きています。また、経営者としてコーポレートファイナンスの知識は欠かせません。先日も社員にストックオプションを発行する際に、「会計・バリュエーションの基礎」で勉強した事がとても役に立ちました。金融機関と話す際にもそれらの知識があることで、対等にコミュニケーションすることができています。

そして、これからM&Aもしたいと考えていますので、さらに当時学んだ事が活きてくる機会が増えそうです。

miyawaki6.jpgまた、同級生を中心に大学院でできたネットワークに支えられています。私の会社の財務戦略は当時政府系ファンドにいた同級生が支えてくれています。また、起業当初は上場を目指した会社の立ち上げ方について、ファイナンスや人事労務の視点から同級生の有識者達に様々なアドバイスをもらいました。エネルギーの知見については大橋ゼミの先輩の方々とのネットワークが役に立っています。

これからMBAを目指す方にアドバイスをお願いします。

私がFSで得たのは"自信"です。想像以上に大変でしたが、その分やり切ることができたときは大きな自信になりました。本当に一皮剥けた感じです。

そして、素晴らしい仲間との友情ができたことも私の人生にとって非常に大きな財産です。

金融理論を極めたい方は勿論、私のように経営者を目指すような方にも大変大きな学びがあります。その分、勉強はとても大変ですが、やりきった時の充実感と自信は何物にも代えがたい財産となります。そしてここで得たネットワークも一生物です。"本気"で大きなチャレンジをしたい方、自分をアップグレードしたいには是非オススメします。

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※本記事の内容、肩書き等は2021年1月当時のものです。

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