2022年04月05日

メディア掲載

宮川准教授の共著論文「Demand Shock Propagation Through an Input-output Network in Japan」が公表されました

 宮川大介准教授と荒田禎之氏(経済産業研究所の研究員 )との共著論文「Demand Shock Propagation Through an Input-output Network in Japan」は独立行政法人経済産業研究所(RIETI)のディスカッション・ペーパー(英語)として2022年3月 に公開されましたRIETIのサイトからは全文をダウンロードすることができます。 

Demand Shock Propagation Through an Input-output Network in Japan
日本語タイトル:サプライチェーンネットワークを通じた需要ショックの伝播

  

【概要】
 Acemoglu et al. (2012) に代表される近年の研究は、ミクロレベルのショックがサプライチェーンネットワークを通じて伝播し、結果としてマクロレベルの変動を生み出すことを報告している。これらの研究の多くは、自然災害などの外生ショックに起因する「上流から」の供給ショックの伝播を実証的に示しているが、「下流から」の需要ショックの分析は乏しい。本研究では、外生的な需要ショックの実例として、世界金融危機時における日本企業の輸出急減とコロナ禍における飲食・宿泊サービスの消費急減に注目することで、ミクロレベルの需要ショックがサプライチェーンネットワークを通じてどの様にサプライヤーへ伝播するかを実証的に検討した。ショックの伝播に関する異質性を考慮した分析から、負の需要ショックに見舞われた顧客企業からサプライヤーへのショックの伝播は、大企業間もしくは中小企業間での取引では強く生じるが、大企業と取引している中小サプライヤーには波及しないことを発見した。第一に、世界金融危機に起因する負の需要ショックが、大企業を中心とする輸出企業から規模の大きなサプライヤーへ伝播していた。これらの大規模な輸出企業と大規模なサプライヤーは互いを主要な取引先と見做しており、こうした取引関係の強さがショックの伝播に繋がったと考えられる。第二に、中小規模のサプライヤーもこれらの大規模な輸出企業を主要な取引先と見做していたが、輸出企業から見てこれらの中小サプライヤーは必ずしも主要な取引先ではなく、こうした非対称な関係性の下で需要ショックの伝播は限定的な水準に留まった。第三に、コロナ禍における特定産業(飲食・宿泊業)での需要消失を内容とする需要ショックは、これらの産業に属する中小規模の顧客企業から主要なサプライヤーである中小企業へ伝播した。これらの結果は、取引関係における相互の位置付けがショックの伝播に関する異質性を規定する重要な要因であることを示唆している。