修了生の活躍

少しでも良い社会を ― ファーストペンギンであれ

㈱JPX総研

フロンティア戦略部長 山藤敦史氏、

IT開発部 情報システム デジタライゼーション担当部長  西端恭一氏

2003年3月修了、 2006年3月修了

これまでのキャリアは?

デジタル戦略を支える2人の部長

sannto1.jpg山藤さん:経済学部を卒業後1995年に東京証券取引所に入社しました。デリバティブの市場/商品企画、コンプライアンス担当、海外営業担当などを経て、2015年より㈱日本取引所グループに移り、新規事業推進を担当、2018年よりフィンテック推進室長、2020年よりIT企画部長 兼総合企画部フィンテック推進室長、2022年4月より㈱JPX総研のフロンティア戦略部長です。

 

西端さん:私も経済学部を卒業後、1998年に東京証券取引所に入社し、nihibata4.jpgデリバティブ市場運営、トレーディングシステムの開発、海外営業担当、コネクティビティサービスなどを経て、2015年より大阪取引所のIT部門に従事しました。2020年からは東京証券取引所の情報系ITインフラを担当し2021年からIT開発部 情報システム デジタライゼーション担当部長で、2022年4月より会社の組織変更により肩書そのままで㈱JPX総研所属です。


この4月から同じ会社になられたそうですが、㈱JPX総研とはどの様な会社でしょうか。また、お2人は一緒に案件を進めることもありますか。

山藤さん:㈱JPX総研は日本取引所グループのデータ・デジタル事業を集約した戦略子会社です。JPXグループ全体として2030年までに「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」を目指すという長期ビジョンを公表しているのですが、これを牽引すべく、従来の取引所の枠組みにとらわれない事業展開を目指しています。わかりやすい例で言えば、デジタル証券やサステナビリティ関連事業もスコープの一つです。二人とも近年は新規サービス開発やDXを仕事にすることが多いので、一緒の案件は多いです。
西端さん:期は違いますが、FSでの共通の経験があるので、同じ釜の飯を喰った連帯感はありますね。
会話のベースが理解できていたり、共通認識があっていたりしますし、業務上の難題があっても「ポートフォリオ理論の授業に比べれば大したことない」と笑いにしたりしています。実務的には「物事を抽象化・一般化して会話する」ことが出来るようになった気はします。

FSで学ぼうと思われたのはなぜですか?

「体系だった理解」、「強みを持つ」を果たすため、鍛えられる大学院を探す

山藤さん:入社5~6年目には、デリバティブのヘッジ取引について証券会社担当と議論しないといけないことが増えてきており、理解を深めるために独学でファイナンス理論の勉強をしていたのですが、体系だった理解をしたいと思い大学院を探しました。当時の会社の制度では、支援を受けながら通学できる大学院は法学部のみだったのですが、ファイナンス系を加えて欲しいと人事に交渉して入れてもらったのが当時のICS(FSの前身)でした。FSは最もハードで、かつ、「自分に不足している体系だった知識が得られる」と募集要綱を見て思い、2001年に入学しました。自分で交渉して作った企業派遣の第一号を担った形になりました。
西端さん:私は入社後に先輩方に「横連携ができる幅広い業務理解と、何か一つの強みの両方を持つといいよ」とアドバイスされた記憶があります。いわゆるT字型人材ということだと思うのですが、私は若干欲張りで「デリバティブ」と「IT」という二つの分野を強みに持ちたい、と考えました。当時(2004年)その分野を鍛えられる"専門職大学院"は少なかったのですが、会社の制度上で通える指定をもらっていたこと、山藤さんが行っていたこともあり、FSを選びました。FSにはデリバティブ分野に強い先生も多く、自分を鍛えられると考えました。

「西端さんは山藤さんに相談されましたか?」

西端さん:進路相談させていただきました。オススメというより「大変だよ~」というアドバイスの方が印象に残っています。
山藤さん:当時、私が学んだことを社内に還元するために、自分の勉強資料を公開したり、聞かれれば質問に答えていました。西端さんには強くオススメしましたが、自分がかなり苦労したこともあり、どのくらいの負担かも正直に答えていたので、そちらの印象の方が強く残ったかもしれません。

MBAの授業は、どのような形で業務に役立っていますか

学んだ知識や技術はすぐ役立つ。しかし最も役立っているのは金融リテラシーが身についた事 

西端さん:細かい技術的な学びでもちろんたくさん生かされていることはあるのですが、大きな観点としては「数式・統計・学術的に」といったことにビビらなくなったといったことでしょうか(笑)。
今でこそ修士を持っていたりまた理系や金融工学を勉強された方々が増えていますが、当時はそれほど多くはなく、数式や機械が出してくる数字をブラックボックスのようなものとして扱ったり、前提条件などが理解できていなかったり、ちょっとした変化球に対応出来なかったりということも多かった気がします。私自身は文系出身でもあるのですが、自分に自信を持って理解をしたり話をしたり利用したりすることが出来るようになったことが大きいかな、と思います。
山藤さん:リスク管理や理論価格算出の評価で、金融工学的な知識が前提とされることが年々増えており、学んだ知識は業務に役立っております。学んだ知識で不足する場合も、どの辺を押さえておけば良いかという勘所も何となくわかるので、早くキャッチアップできます。また、実習や修士論文を通じて、自分で色々と試行錯誤したことで、理論モデルの限界や制約がわかるので、適当な説明に惑わされにくくなったと思います。

学生生活はいかがだったでしょうか。

没入感のある濃密な学びの期間には仲間とのきずなも深まる

「具体的に何を中心に据えて学びましたか」

山藤さん:証券・デリバティブ・プロジェクト・会社とあらゆるものをプライシングする考え方を学んだと思います。また、そのアプローチや背景にある考え方が、単一のものでなく、他種多様であることも驚きでした。
西端さん:「デリバティブのプライシング」や「データ分析」「証券化」などが中心です。一方、「コーポレートファイナンス」系も授業を受けているうちにその面白さや深さがわかってきたことは発見でした。

「印象に残っているエピソードは」

西端さん:授業後の飲み会などはもちろん、同級生たちみんなで温泉旅行に行ったり、結婚式に呼んでいただいたり、と幅広い業種の仲間たちが出来たこと自体が財産です。sannto3.jpg
また、平日も夜遅く、土日もいそいそと学校に出かける毎日に、妻は義理の母から「それは浮気されている。社会人の大学院でそんなに宿題が出たり土日も学校に行ったりするようなところがあるわけないよ」と言われたとのこと(笑)。
山藤さん:本当に土日も含めてずっと宿題や予習復習をしていて、通勤電車の中でもやっていました。外出中に、ふっと思い付いた解法を忘れないようにメモすることもあり、唄が降りてきたアーティストってこんな気分なのかなと思ったのですが、家族からは、そんな良いものじゃないと一蹴されました。

FSで学ぶことで自分の中に変化はありましたか

優秀な同期からうける刺激が活力となる

西端さん:世界観は広がった気がします。先生方との会話や授業・ゼミでの話はアカデミックな世界として非常に新鮮でしたし、また、同級生との会話ではnishibata2.JPG各々の業務課題をどのようなアカデミックな問題に落とし込むのか、といったあたりで、共通言語で一緒に他社の業務課題に取り組んでいるような感覚にもなりました。また総じてFSの同級生はその後も華々しい活躍をされている方々が多いです。基本的に聡明でありながらもチャレンジ精神が旺盛な方々が多く、お会いするたびに「自分ももう一歩頑張ろう」という活力をもらえる気が今でもします。
山藤さん:そうですね。同級生がとても優秀で、社内基準で仕事をしていてはいけないなと痛感しました。キャリアパスを変えたわけではありませんが、求める仕事の質は上がったと思います。

これからMBAを目指す方にアドバイスをお願いします


西端さん:大変ではありますが、自分の幅を知識・経験・人脈などでも広げることにもつながります。長い人生のうち2年間ぐらいムチ打ってもいいじゃないですか。
sannto2.jpg山藤さん:そうですね。これを耐えられたのだから、大抵の苦労は耐えられるという自信が付きました。大変な分、その後の人生に大きなプラスになると思います。強くお勧めします。

西端さん:三浦先生(現 一橋大学名誉教授)が、「金融は欧米のモノマネになっているものが多いが、日本発の何かを作りたい」nishibata3.JPGとおっしゃった話は今でも覚えています。自分たちだけで何か出来るわけではないのですが、多くの卒業生や業界でも同じような知識・経験を持った人たちが増えてきていると思っています。小さいものでもいいので、どこかのタイミングで何か「えっ!世界の人たちが使っているこの概念って日本発だったの!?」というようなものを生み出せれば、と思います。
山藤さん:社会全体で「できない理由・やらない理由」の議論が先行して、閉塞感を感じている人も増えているように思います。FSのコミュニティから多くのファーストペンギンが現れると良いですね。

2p.jpg

※本記事の内容、肩書き等は2022年4月当時のものです。

2022年2月16日のファイナンスクラブでは、お二人に「金融証券市場DXの可能性と現在地」という内容でご講演いただきました。講演の概要こちらにまとめがございます。

過去の修了生インタビューはこちら